膵嚢胞腺癌の1剖検例

まれな疾患であるとされている膵嚢胞腺癌の1剖検例を経験した, 症例は84才男性で, 食欲不振及び腹水にて入院, 約2週間後に呼吸不全にて死亡した. 腹水細胞診ではClass Vを示し腺癌と判定され, 腹部CT所見では膵に辺縁不整で多数の嚢胞を含む腫瘍性病変が認められ, 嚢胞腺癌が疑われた. 各種腫瘍マーカーの検索では, CA19-9, NCC-ST-439, SLXが著しく高値を示し, CEA, CA125, Du-Pan-2も上昇がみられた. 剖検所見では膵は, 体尾部を中心に多数の嚢胞と結節性病変から成る腫瘍で占められ, 転移は肝, 両肺, 腹膜ならびに多数のリンパ節に及んでいた. 組織学...

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Published in医療 Vol. 43; no. 10; pp. 1058 - 1061
Main Authors 川原, 禮子, 伊藤, 文也, 佐々木, 賀広, 工藤, 優, 梅村, 芳文, 福原, 泰樹, 土田, 博, 松本, 一仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 20.10.1989
国立医療学会
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Summary:まれな疾患であるとされている膵嚢胞腺癌の1剖検例を経験した, 症例は84才男性で, 食欲不振及び腹水にて入院, 約2週間後に呼吸不全にて死亡した. 腹水細胞診ではClass Vを示し腺癌と判定され, 腹部CT所見では膵に辺縁不整で多数の嚢胞を含む腫瘍性病変が認められ, 嚢胞腺癌が疑われた. 各種腫瘍マーカーの検索では, CA19-9, NCC-ST-439, SLXが著しく高値を示し, CEA, CA125, Du-Pan-2も上昇がみられた. 剖検所見では膵は, 体尾部を中心に多数の嚢胞と結節性病変から成る腫瘍で占められ, 転移は肝, 両肺, 腹膜ならびに多数のリンパ節に及んでいた. 組織学的に膵腫瘍の嚢胞内面は, 異型性を示す立方上皮細胞と淡明な胞体を有する一層の高円柱上皮細胞で覆われ, しばしば内腔に乳頭状増生を伴つていた. また腫瘍細胞は周囲に浸潤性に増殖し, 膵間質は線維増加を伴つていた. これらの腫瘍細胞の胞体には粘液産生所見が認められた粘液性嚢胞腺癌と診断された.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.43.1058