乳腺クリニックの役割 受診パターンに応じた任意型検診提供と教育啓発による死亡率低下への期待

近年増加傾向にある,乳がん死亡率を低下させるためには乳がん検診受診率向上が不可欠である。2000年のマンモグラフィ併用検診導入を皮切りに,ピンクリボン活動など乳がん啓発活動の広がりと並行し,国家施策としても,がん対策基本法制定や,平成21年度補正予算による検診無料クーポンの配布など,乳がん検診受診率向上を目指す変化が進んでいる。一方,乳がん検診受診率は現在約20%程度と,進歩はみられるものの死亡率低下に至るには程遠い現状がある。2009年NPO乳房健康研究会による一般女性の認識行動調査によると,実際に受診者パターンの違いにより,受診行動を動機づけるには,それぞれ行動を促進する因子が異なることが...

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Published in日本乳癌検診学会誌 Vol. 19; no. 2; pp. 123 - 129
Main Author 島田, 菜穂子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会 30.06.2010
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Summary:近年増加傾向にある,乳がん死亡率を低下させるためには乳がん検診受診率向上が不可欠である。2000年のマンモグラフィ併用検診導入を皮切りに,ピンクリボン活動など乳がん啓発活動の広がりと並行し,国家施策としても,がん対策基本法制定や,平成21年度補正予算による検診無料クーポンの配布など,乳がん検診受診率向上を目指す変化が進んでいる。一方,乳がん検診受診率は現在約20%程度と,進歩はみられるものの死亡率低下に至るには程遠い現状がある。2009年NPO乳房健康研究会による一般女性の認識行動調査によると,実際に受診者パターンの違いにより,受診行動を動機づけるには,それぞれ行動を促進する因子が異なることが検出され,多様な検診サービスの提供が受診率向上に対して重要であることが判明した。受診率向上を目指すには対策型検診に加え,若年者や職域を対象とした任意検診の拡充が不可欠であり,mass screeningと並んで個人やあらゆる年齢層に近づく医療サービスが求められている。このように受診者意識やニーズの多様化の伴い,乳がん検診提供機会の選択肢拡大は受診率向上のための一つの鍵である。乳腺かかりつけ医として乳腺クリニックは,利便性・気軽さ,迅速さ,配慮などの特徴を生かし,従来の受診行動者や年齢層に加え,非受診者に対する受診機会の提供と教育・習慣づけの役割を担っていると考えられる。
ISSN:0918-0729
1882-6873
DOI:10.3804/jjabcs.19.123