尿路性器感染症における E. coli の病原性因子について その2. P線毛の検出と病態との関連性

P線毛の特異的な検出法としてグロポシド含有リポソーム凝集法を考案し, 尿路に基礎疾患のない患者に発生した尿路性器感染症由来E. coli (急性単純性腎盂腎炎由来47株, 急性細菌性前立腺炎24株, 急性単純性膀胱炎183株)を対象としてP線毛の検出を行った. 併せて, 各病態における他の病原性因子との関連性を比較検討した. グロボシド含有リポソーム凝集法はP線毛の検出に簡便かつ有用な方法であった. 各群におけるP線毛の保有率は, 急性単純性腎盂腎炎48.9%, 急性細菌性前立腺炎12.5%, 急性単純性膀胱炎22.5%, 健常者糞便由来株10.0%であった. 急性単純性腎盂腎炎では高率に認め...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 79; no. 7; pp. 1169 - 1176
Main Author 那須, 良次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 20.07.1988
The Japanese Urological Association
社団法人日本泌尿器科学会
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ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.79.7_1169

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Summary:P線毛の特異的な検出法としてグロポシド含有リポソーム凝集法を考案し, 尿路に基礎疾患のない患者に発生した尿路性器感染症由来E. coli (急性単純性腎盂腎炎由来47株, 急性細菌性前立腺炎24株, 急性単純性膀胱炎183株)を対象としてP線毛の検出を行った. 併せて, 各病態における他の病原性因子との関連性を比較検討した. グロボシド含有リポソーム凝集法はP線毛の検出に簡便かつ有用な方法であった. 各群におけるP線毛の保有率は, 急性単純性腎盂腎炎48.9%, 急性細菌性前立腺炎12.5%, 急性単純性膀胱炎22.5%, 健常者糞便由来株10.0%であった. 急性単純性腎盂腎炎では高率に認められたものの, 尿路性器感染症全体としては必ずしも高率ではなかった. 一方, 尿路性器感染症全体におけるP線毛を含むMR線毛 (マンノース非感受性血球凝集を示す線毛) の保有率は74.8%, type 1線毛の保有率は88.2%と高率であった. しかも, MR線毛と type 1線毛をともに有する株は尿路性器感染症全体では67.8%, 急性単純性腎盂腎炎で70.2%, 急性細菌性前立腺炎で75.0%であり, 糞便由来株での18.6%に比べ明らかに高率であった. したがって, P線毛を含むMR線毛と type 1線毛の2種類の線毛をともに有することが尿路病原性因子として重要であると考えられた.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.79.7_1169