調理中のバレイショに対する食塩の浸透性

食塩溶液中でバレイショを加熱する場合の変化を, 金属イオンについて成分の移動という観点から検討した.得られた結果は次のとおりである. 1) 加熱に伴う温度と状態の変化を加熱時間と断面について表現するとcooking stage chromatographyが得られる. 2) 食塩溶液中のナトリウムイオン濃度(外液)とバレイショの外部に浸透したナトリウムイオン濃度とは, 平衡する傾向を示すが内部濃度は外液濃度に達しきれない. 3) 加熱中の可食点で, 食塩の外部浸透圧は約 13 気圧となるが, 中心部分では6~7気圧であって上昇性に乏しい. 4) 昇温速度は立ちあがりが大きく前傾となり, 最大値...

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Published in家政学雑誌 Vol. 36; no. 3; pp. 161 - 166
Main Authors 泉谷, 希光, 中澤, 勇二, 和田, 涼子, 黒澤, 美智子
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人 日本家政学会 20.03.1985
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ISSN0449-9069
1884-7870
DOI10.11428/jhej1951.36.161

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Summary:食塩溶液中でバレイショを加熱する場合の変化を, 金属イオンについて成分の移動という観点から検討した.得られた結果は次のとおりである. 1) 加熱に伴う温度と状態の変化を加熱時間と断面について表現するとcooking stage chromatographyが得られる. 2) 食塩溶液中のナトリウムイオン濃度(外液)とバレイショの外部に浸透したナトリウムイオン濃度とは, 平衡する傾向を示すが内部濃度は外液濃度に達しきれない. 3) 加熱中の可食点で, 食塩の外部浸透圧は約 13 気圧となるが, 中心部分では6~7気圧であって上昇性に乏しい. 4) 昇温速度は立ちあがりが大きく前傾となり, 最大値に到達後はゆるやかに低下する.また, ナトリウムイオンの移動速度については立ちあがり後, 最大値を保とうとする定常期が続き, その後漸減する. 5) 内部では昇温速度に乏しく, しかもナトリウムイオンの移動性が乏しいので食塩の浸透を困難にしている. 6) 食塩の浸透圧分圧とその他の塩類の分圧和とを比較した.内部では加熱開始時に, その他の塩類分圧和のほうが大きく, 食塩のナトリウムイオンは移動しやすい.可食点付近で浸透圧比が1.0となり等張となる.しかしその後は, 食塩分圧のほうが大きくなるが, ナトリウムの浸透は抑制されている. 7) バレイショに対する食塩の浸透方向は一方通行で内部では多成分が濃縮している.さらに, 内部における食塩の移動性は著しく乏しい. ここで著しく温度を上昇させ, 細胞膜と細胞間物質の破壊を伴うとCSCのとおり形態損傷を起こして分解する. 8) しょうゆで調味する場合には, 食塩の浸透性が食塩のみで調味したときより, 促進されている. このように調味条件としての食塩の浸透性をみると, ナトリウムイオンの浸透性の原理が一部明らかになった.しょうゆ中の食塩の移動状態のごとく, 食塩と他の調味料との組み合わせ, あるいは添加順序の違いが相互に影響しあうものと推察される.
ISSN:0449-9069
1884-7870
DOI:10.11428/jhej1951.36.161