復興公営住宅居住者の生理学的特徴に関する横断的研究

【現場へのアイデア】本研究の結果から、復興公営住宅の居住者の生理学的特徴が明らかにな った。運動は社会的結びつきを強めるツールとしてもきわめて有用であることから、トレーニ ング指導者の果たす役割や可能性は高い。 【目的】本研究の目的は、宮城県気仙沼市の復興(災害)公営住宅居住者を対象とし、身体機 能および骨格筋形態・機能の現状を把握することである。 【方法】2024年8月18日から19日に開催した運動教室に参加した54名を対象とした。対象者はア ンケート調査により、復興公営住宅に居住する高齢者(復興群:n=19、年齢=78.9±7.1歳、 身長=152.2±1.0cm、体重=55.1±12.4...

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Published inConference Proceedings of Japan Society of Scientific Coaching forTraining Vol. 2024; p. 14
Main Authors YAMASHITA TAKASHI, 加藤 岳, 小菅 悠太, 藤野 泰成, OHKUBO Takeshi, SETO Hiroaki, 越智 英輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本トレーニング指導学会 2024
Japan Society of Scientific Coaching for Training
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ISSN2433-7773
2434-3323
DOI10.32171/cpjssct.2024.0_14

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Summary:【現場へのアイデア】本研究の結果から、復興公営住宅の居住者の生理学的特徴が明らかにな った。運動は社会的結びつきを強めるツールとしてもきわめて有用であることから、トレーニ ング指導者の果たす役割や可能性は高い。 【目的】本研究の目的は、宮城県気仙沼市の復興(災害)公営住宅居住者を対象とし、身体機 能および骨格筋形態・機能の現状を把握することである。 【方法】2024年8月18日から19日に開催した運動教室に参加した54名を対象とした。対象者はア ンケート調査により、復興公営住宅に居住する高齢者(復興群:n=19、年齢=78.9±7.1歳、 身長=152.2±1.0cm、体重=55.1±12.4kg、BMI=23.6±4.0)、および一般住宅に居住する高 齢者(一般群:n=35、年齢=75.1±6.6歳、身長=153.2±0.7cm、体重=54.9±8.1kg、BMI= 23.4±3.0)の2群に分類した。測定項目は血圧、心拍数、握力、等尺性膝伸展筋力(MVC)、力 の立ち上がり速度(RFD:0-50ms、0-100ms、0-150ms、0-200ms、0-250ms、0-300ms)、ロコモ 度テスト(2ステップテスト、立ち上がりテスト、ロコモ25テスト)、超音波機器による筋横断 面積、筋厚、筋輝度とした。取得したデータは、Shapiro-wilk検定で正規性を確認した。各測 定項目の群間比較には、対応のないt 検定を行い、有意水準は5%未満とした。また、Cohen’s d の効果量を算出し、>0.2で小、>0.5で中、>0.8で大とした。 【結果】復興群のMVCは一般群よりも有意に低値を示した(p =0.043;d =0.617)。RFDはすべて の時間間隔において復興群で有意に低値を示した(0-50ms:p=0.046;d=0.513、0-100ms: p =0.008 d =0.833、0-150ms:p =0.007 d =0.857、0-200ms:p =0.008;d =0.838、0-250ms: p =0.013;d =0.785、0-300ms:p =0.012;d =0.794)。2ステップテストは復興群で有意に低値を 示した(p <0.001 d =1.191)。その他の測定項目においては、群間の有意差は認められなかった。 【考察】復興公営住宅の居住者は、新たな地域コミュニティを作る難しさがあり、生活が孤立 していくこともある。本研究では、気仙沼市の復興公営住宅居住者の下肢筋力および力の立ち 上がり速度の低下を確認した。森山ら(2016)は、南相馬市の仮設住宅居住者を対象とした研 究において、1日平均歩数や移動能力の低下ならびに男性の膝関節伸展筋力の低下を報告して いる。加えて金森ら(2018)は、気仙沼市において6割の団地が公共交通機関の徒歩圏外にあり、 徒歩アクセシビリティが低下していることを報告している。このことから、気仙沼市の復興公 営住宅の居住者は、居住地移転による生活環境の変化に伴う身体活動量の低下などにより、筋 力・筋機能の低下に影響している可能性がある。
ISSN:2433-7773
2434-3323
DOI:10.32171/cpjssct.2024.0_14