各種急性肺傷害モデルにおけるミトコンドリア機能障害の意義について

二つの作用機序の異なる急性肺傷害のメディエーターである Endothelin-1 (以下ET-1) および Leukotoxin (以下Lx) を用いて, ラット摘出灌流肺にて急性肺傷害を起こさせた際にミトコンドリア機能への影響に違いが認められるのかどうか検討した. ET-1 (0.5nmol) 処置肺では Vehicle 処置肺と比較して肺灌流圧と肺湿重量の増加がみられたが, 灌流液中へのLDHの逸脱増加はなく, 抽出ミトコンドリアのコハク酸を基質とした state 3および state 4の酸素消費量および肺組織中のATP量に変化はなかった. 一方, Lx (30μmol) 処置肺では V...

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Published in日本胸部疾患学会雑誌 Vol. 34; no. 8; pp. 843 - 849
Main Authors 中井, 継彦, 小澤, 高将, 石崎, 武志, 酒井, 哲夫, 早川, 美佳, 松川, 茂
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 社団法人 日本呼吸器学会 25.08.1996
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ISSN0301-1542
1883-471X
DOI10.11389/jjrs1963.34.843

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Summary:二つの作用機序の異なる急性肺傷害のメディエーターである Endothelin-1 (以下ET-1) および Leukotoxin (以下Lx) を用いて, ラット摘出灌流肺にて急性肺傷害を起こさせた際にミトコンドリア機能への影響に違いが認められるのかどうか検討した. ET-1 (0.5nmol) 処置肺では Vehicle 処置肺と比較して肺灌流圧と肺湿重量の増加がみられたが, 灌流液中へのLDHの逸脱増加はなく, 抽出ミトコンドリアのコハク酸を基質とした state 3および state 4の酸素消費量および肺組織中のATP量に変化はなかった. 一方, Lx (30μmol) 処置肺では Vehicle 処置肺と比較して肺湿重量の増加, 灌流液中へのLDHの逸脱増加とともに, 抽出ミトコンドリアのコハク酸を基質とした state 3および state 4の酸素消費量が低下し肺組織中のATP量も低下した. さらに, 流出圧負荷による圧充進型肺水腫においては, 灌流液中へのLDHの逸脱増加やミトコンドリア機能障害は認められなかった. 以上より, 各メディエーターによって肺ミトコンドリア機能障害の感受性に違いのあることがわかった. さらに, ミトコンドリア機能障害はエネルギー産生系の見地から, 特に透過性亢進型肺水腫の病態に関与しうる可能性が示唆された.
ISSN:0301-1542
1883-471X
DOI:10.11389/jjrs1963.34.843