透析アミロイドーシスにより難治性の麻痺性大腸イレウスを来した1例

症例は66歳の男性で, 約30年間にわたる血液透析歴がある. 3年程前よりイレウス症状を繰り返していたが, 保存的に軽快していた. 透析アミロイドーシスを疑い大腸内視鏡下生検を行うもアミロイドの沈着を確認できず確定診断には至っていない. 今回, 大腸の著明な拡張を来し, イレウスの診断で保存的に経過観察していたが改善せず, イレウス解除目的にS状結腸に人工肛門を造設した. しかし, 大腸は固有筋層へのアミロイドの沈着により機能不全の状態に陥っていたため症状の改善にはつながらなかった. 透析アミロイドーシスの場合, 消化管平滑筋への多量アミロイド沈着が消化管運動機能障害を引き起こし, 消化管障害...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 41; no. 6; pp. 676 - 681
Main Authors 福田, 精二, 平田, 稔彦, 山根, 隆明, 山口, 賢治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2008
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.41.676

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Summary:症例は66歳の男性で, 約30年間にわたる血液透析歴がある. 3年程前よりイレウス症状を繰り返していたが, 保存的に軽快していた. 透析アミロイドーシスを疑い大腸内視鏡下生検を行うもアミロイドの沈着を確認できず確定診断には至っていない. 今回, 大腸の著明な拡張を来し, イレウスの診断で保存的に経過観察していたが改善せず, イレウス解除目的にS状結腸に人工肛門を造設した. しかし, 大腸は固有筋層へのアミロイドの沈着により機能不全の状態に陥っていたため症状の改善にはつながらなかった. 透析アミロイドーシスの場合, 消化管平滑筋への多量アミロイド沈着が消化管運動機能障害を引き起こし, 消化管障害が出現すると考えられているが, 鏡視下生検でその病態を把握することは非常に困難である. 長期透析患者では, 透析アミロイドーシスが重症化して回復不能な腸管麻痺を来す病態があることを認識したうえで治療法を考慮する必要がある.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.41.676