上腸間膜静脈・門脈血栓症を発症したプロテインS欠乏症の1例
症例は60歳の男性. 腹痛, 嘔吐を主訴に来院し腸閉塞の診断で入院した. 腹部造影CT検査所見にて上腸間膜静脈から門脈に血栓像を認めた. 凝固線溶検査でD-dimerが高値を示し, 血栓形成素因検索の結果プロテインS活性が10%以下と著しく減少していた. 抗凝固療法にて症状の軽快, 血栓像の消失を認めたため第47病日に退院したが約5か月後, 再度腸閉塞症状にて入院した. 再入院時血栓症再発の所見は認めなかった. 小腸二重造影にて回腸に限局性索状狭窄部を認めたため同部の切除術を施行した. 病理組織学的には病変部に一致して穿通性潰瘍瘢痕を認め, 小腸間膜の静脈内に器質化血栓が確認された. 現在,...
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Published in | 日本消化器外科学会雑誌 Vol. 35; no. 2; pp. 184 - 188 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本消化器外科学会
2002
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Summary: | 症例は60歳の男性. 腹痛, 嘔吐を主訴に来院し腸閉塞の診断で入院した. 腹部造影CT検査所見にて上腸間膜静脈から門脈に血栓像を認めた. 凝固線溶検査でD-dimerが高値を示し, 血栓形成素因検索の結果プロテインS活性が10%以下と著しく減少していた. 抗凝固療法にて症状の軽快, 血栓像の消失を認めたため第47病日に退院したが約5か月後, 再度腸閉塞症状にて入院した. 再入院時血栓症再発の所見は認めなかった. 小腸二重造影にて回腸に限局性索状狭窄部を認めたため同部の切除術を施行した. 病理組織学的には病変部に一致して穿通性潰瘍瘢痕を認め, 小腸間膜の静脈内に器質化血栓が確認された. 現在, 抗凝固療法を継続しており再発なく経過中である. 本症例は血栓症の誘因となる基礎疾患を認めず, プロテインS活性の低下が家族内にも認められたことより, 極めてまれな先天性プロテインS欠乏症による上腸間膜静脈・門脈血栓症と考えられた. |
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ISSN: | 0386-9768 1348-9372 |
DOI: | 10.5833/jjgs.35.184 |