腹腔鏡下胆囊摘出術後に発生した難治性肝性リンパ漏の1例

慢性肝炎を合併した胆石症に対する腹腔鏡下胆囊摘出術後に難治性の腹水貯留を認め,腹水検査の結果肝性リンパ漏と診断し手術的にリンパ漏閉鎖を行いえた症例を経験したので報告する.症例は54歳の男性で,胆石症に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.術後に保存的治療ではコントロールできない難治性の腹水貯留が発生した.腹水検査の結果,肝性リンパ漏と診断し術後5か月目に縫合閉鎖を施行した.肝硬変や慢性肝炎を伴う胆石症に胆囊摘出術を施行した際の合併症の一つに腹水の貯留があるが,通常は保存的治療で軽快する.しかし,極めてまれではあるが難治性の場合があり,リンパ管切離部からの肝性リンパ液の漏出に起因することがあるため...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 46; no. 3; pp. 189 - 195
Main Authors 松本, 知拓, 伊関, 丈治, 京田, 有介, 大場, 範行, 高木, 正和, 渡辺, 昌也, 大端, 考, 佐藤, 真輔, 永井, 恵里奈, 菊山, 正隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 20.03.2013
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Summary:慢性肝炎を合併した胆石症に対する腹腔鏡下胆囊摘出術後に難治性の腹水貯留を認め,腹水検査の結果肝性リンパ漏と診断し手術的にリンパ漏閉鎖を行いえた症例を経験したので報告する.症例は54歳の男性で,胆石症に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.術後に保存的治療ではコントロールできない難治性の腹水貯留が発生した.腹水検査の結果,肝性リンパ漏と診断し術後5か月目に縫合閉鎖を施行した.肝硬変や慢性肝炎を伴う胆石症に胆囊摘出術を施行した際の合併症の一つに腹水の貯留があるが,通常は保存的治療で軽快する.しかし,極めてまれではあるが難治性の場合があり,リンパ管切離部からの肝性リンパ液の漏出に起因することがあるため,腹水検査で原因を明らかにすることが重要である.肝硬変や慢性肝炎を合併した患者の胆囊摘出術に際しては術後の合併症として肝性リンパ漏を念頭におく必要がある.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2012.0190