6年間の維持透析患者胃検診の成績
1975年, 腎不全患者には悪性腫瘍の発生率が高いとのMatasの報告以来, 欧米・我国にも同様の報告が散見される. そこで我々は, 当院において透析導入後6ヵ月以上経過した維持透析中の患者に, 昭和54年以来毎年1回上部消化管レントゲン検査を施行し, 必要に応じ胃内視鏡検査, 生検診を行ってきた. その結果当院透析患者の胃X-P受診率は, 昭和54年から56年までは80%台, 57年から59年までは90%以上で, 平均91%で要精検率は平均30%であった. また要精検者中の精検実施率は平均75%であり, 施行者中68%に何らかの病変を認めた. これを透析患者延数からみると14%に上部消化管病...
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Published in | 日本透析療法学会雑誌 Vol. 19; no. 7; pp. 739 - 744 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本透析医学会
28.07.1986
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Subjects | |
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ISSN | 0911-5889 1884-6211 |
DOI | 10.4009/jsdt1985.19.739 |
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Summary: | 1975年, 腎不全患者には悪性腫瘍の発生率が高いとのMatasの報告以来, 欧米・我国にも同様の報告が散見される. そこで我々は, 当院において透析導入後6ヵ月以上経過した維持透析中の患者に, 昭和54年以来毎年1回上部消化管レントゲン検査を施行し, 必要に応じ胃内視鏡検査, 生検診を行ってきた. その結果当院透析患者の胃X-P受診率は, 昭和54年から56年までは80%台, 57年から59年までは90%以上で, 平均91%で要精検率は平均30%であった. また要精検者中の精検実施率は平均75%であり, 施行者中68%に何らかの病変を認めた. これを透析患者延数からみると14%に上部消化管病変を有していた. これらの病変はびらん性胃炎, 胃・十二指腸潰瘍, 胃ポリープ, 胃癌などであった. また有所見者の半数には生検組織診を行っており, 昭和57年, 59年に各1名の早期胃癌を発見し, 胃切除を行っている. 症例1は50歳女性で, 透析導入後3年目に初めて胃病変を発見. 生検診にてGroupIII-IVaの異型上皮の診断にて経過観察中, 6ヵ月後にGroup Vとなり胃切除を施行. 中等度分化型, 深達度mまでの早期胃癌であった. 症例2は62歳の男性で, 透析導入1.5年後の胃検診にて異常所見が認められ, 内視鏡・生検診の結果胃切除を行った. 症例1と同様に深達度mまでの早期胃癌であった. 以上のように当院での6年間の透析患者の胃検診は201延患者総数中2例に早期胃癌を発見している. そこで我々透析に従事する医師は単に透析療法の良否, 透析に伴う合併症の治療だけでなく, 毎年1回の胃検診等を含め, 積極的に悪性腫瘍の発見に努力する必要があると考えられる. |
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ISSN: | 0911-5889 1884-6211 |
DOI: | 10.4009/jsdt1985.19.739 |