長期透析患者の肺癌術後に発症した進行性多巣性白質脳症と考えられる1症例

透析歴8年の48歳女性に肺癌術後1か月してミオクローヌス様不随意運動, 四肢麻痺, 言語障害, 健忘, 錯乱, 昏睡などの多彩な精神神経症状が出現した. 発病早期に脳波にて広汎な徐波を認めたが,当初脳CT検査では軽い脳萎縮のみであった. 血清アルミニウム (AI) 濃度は8-2μg/dlで, 透析患者の平均血清AI濃度よりやや高値であったが, 透析液は逆浸透処理の上, AI製剤の内服歴もないため, AI脳症は否定的であった. 髄液検査にて蛋白細胞解離が存在し, 発病2か月後の脳CT検査にてびまん性白質浮腫を認めた. 病勢の極期に病因であるJCウイルス (パポバウイルス群) 抗原を髄液細胞から,...

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Published in日本透析療法学会雑誌 Vol. 26; no. 3; pp. 379 - 384
Main Authors 国米, 欣明, 三好, 和也, 高津, 成子, 塩崎, 滋弘, 国友, 桂一, 井上, 文之, 加藤, 賢三, 内田, 晋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本透析医学会 28.03.1993
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ISSN0911-5889
1884-6211
DOI10.4009/jsdt1985.26.379

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Summary:透析歴8年の48歳女性に肺癌術後1か月してミオクローヌス様不随意運動, 四肢麻痺, 言語障害, 健忘, 錯乱, 昏睡などの多彩な精神神経症状が出現した. 発病早期に脳波にて広汎な徐波を認めたが,当初脳CT検査では軽い脳萎縮のみであった. 血清アルミニウム (AI) 濃度は8-2μg/dlで, 透析患者の平均血清AI濃度よりやや高値であったが, 透析液は逆浸透処理の上, AI製剤の内服歴もないため, AI脳症は否定的であった. 髄液検査にて蛋白細胞解離が存在し, 発病2か月後の脳CT検査にてびまん性白質浮腫を認めた. 病勢の極期に病因であるJCウイルス (パポバウイルス群) 抗原を髄液細胞から, JCウイルス抗体を髄液から検出し, 進行性多巣性白質脳症 (Progressive multifocal leucoencephalopathy; PML) と診断した. 経過中経口摂取が不可能な時期は, IVHによる栄養管理を行ったが, 5か月の経過で自然治癒した. PMLは悪性腫瘍などの低免疫状態に合併するスローウイルス感染で, 予後不良の疾患とされているが, 本例は肺癌の根治手術が施行された直後に発症しており, 幸いにも救命し得た. 透析患者に合併したPMLの報告は極めて少ないが, 臨床上では特にAI蓄積による透析脳症との鑑別が重要と考えられる.
ISSN:0911-5889
1884-6211
DOI:10.4009/jsdt1985.26.379