膵体尾部神経鞘腫の1例

症例は58歳の女性. 肝機能精査目的にて初診. 腹部超音波, CTにて膵体尾部近傍に境界明瞭で周囲臓器よりも低吸収域を示す5×6cm大の充実性腫瘍を認めた. MRCPでは膵管の異常を認めず, 血管造影では動脈から分岐する多数の新生血管がみられ, さらに脾静脈の圧迫閉塞に伴う側副血行路が確認された. 術前画像診断では, 膵原発ないし後腹膜由来の神経原性腫瘍を最も考慮し, 開腹下に摘出術を施行した. 境界明瞭で被膜を有する充実性腫瘍が膵内に形成されており, 膵体尾部, 脾合併切除術を施行した. 病理学的には, 紡錘形細胞が主に束状に増生し, 部分的に核の腫大や不整がみられた. 免疫染色はS-100...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 35; no. 4; pp. 403 - 407
Main Authors 小, 泰久, 瀧本, 雅文, 只友, 秀樹, 安藤, 昌之, 丸山, 祥司, 葦沢, 龍人, 大沼, 忍, 原田, 佳明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2002
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.35.403

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Summary:症例は58歳の女性. 肝機能精査目的にて初診. 腹部超音波, CTにて膵体尾部近傍に境界明瞭で周囲臓器よりも低吸収域を示す5×6cm大の充実性腫瘍を認めた. MRCPでは膵管の異常を認めず, 血管造影では動脈から分岐する多数の新生血管がみられ, さらに脾静脈の圧迫閉塞に伴う側副血行路が確認された. 術前画像診断では, 膵原発ないし後腹膜由来の神経原性腫瘍を最も考慮し, 開腹下に摘出術を施行した. 境界明瞭で被膜を有する充実性腫瘍が膵内に形成されており, 膵体尾部, 脾合併切除術を施行した. 病理学的には, 紡錘形細胞が主に束状に増生し, 部分的に核の腫大や不整がみられた. 免疫染色はS-100蛋白陽性であり, Antoni A型の神経鞘腫と診断した. 膵の非上皮性腫瘍は非常に少なく, なかでも神経鞘腫は自験例を含め, 従来14例の報告にすぎず, 極めてまれな症例と考えられたので若干の文献的考察を加え報告した.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.35.403