若年層の住宅像に関する研究 女子大生の住宅像調査

本稿において, 若年層の中でもとくに女子大生の住宅像を把握・検討した結果, つぎのような知見が得られた. (1) 全体の約8割に〈戸建持家志向〉がみられ, 「往宅には庭がかかせない」を8割が支持することから, 持家層出身者が大部分を占めることを考慮する必要があるが, 「庭付き戸建持家」が女子大生にほぼ共通する住宅像であると考えられる.また, その戸建持家像は, 観念的にも, 視覚的な外観選好の点からみても, 洋風のイメージが強いことが特徴である. (2) 主婦層を対象とした予備調査結果とあわせて世代差を比較すると, 女子大生の住宅に対する曖昧なイメージのなかに, 戸建持家を理想とする住宅像が,...

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Published in日本家政学会誌 Vol. 41; no. 1; pp. 51 - 61
Main Authors 碓田, 智子, 住田, 昌二, 金岡, トモコ
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 一般社団法人 日本家政学会 01.01.1990
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Summary:本稿において, 若年層の中でもとくに女子大生の住宅像を把握・検討した結果, つぎのような知見が得られた. (1) 全体の約8割に〈戸建持家志向〉がみられ, 「往宅には庭がかかせない」を8割が支持することから, 持家層出身者が大部分を占めることを考慮する必要があるが, 「庭付き戸建持家」が女子大生にほぼ共通する住宅像であると考えられる.また, その戸建持家像は, 観念的にも, 視覚的な外観選好の点からみても, 洋風のイメージが強いことが特徴である. (2) 主婦層を対象とした予備調査結果とあわせて世代差を比較すると, 女子大生の住宅に対する曖昧なイメージのなかに, 戸建持家を理想とする住宅像が, 同じ持家層の主婦層よりも深く浸透していることから, 戸建持家像は若年層において再生産されていると考えられる. (3) 女子大生の戸建持家像の背景には, 客観的には, 戸建持家に生まれ育った居住歴が関与しているとみられるが, 主観的には, 女子大生の意識に内在する保守的な生活観さらに日本人のアイデンティティが介在していると推察される. (4) 住宅像の地域差は, 〈東京〉が〈集合住宅住みかえ志向〉が強いなど, 他の3地域と異なる傾向を示す点に顕著に現れている.〈東京〉での都市的生活様式や, 他地域よりも情報や流行の先端に接触しやすいことなどが, 住宅像の違いを生む一因になっていると考えられる. これまでみてきたように, 比較的上層家庭の持家層出身者が多いという前提のもとで, 女子大生の住宅に対するイメージのなかに, 洋風・庭付き戸建持家像は支配的な位置を占めているといえる.こういった女子大生の住宅像の背景を解明するうえで, 居住経験や, ライフスタイルが重要な手がかりになると考えられるが, これらがどの程度住宅像を規定するかについては, なお検討すべき課題である.さらに, 若年層全体としての住宅像をとらえるためには, 今後, より幅広い層を対象として検討する必要があると考えられる. 今回の調査から, 持家層出身が多いという前提のもとで, 新人類とよばれ, 多様な生活感覚をもつといわれる女子大生が, 住宅については, 一般的ともいえる「庭付き戸建持家」の理想像を, 同じ戸建持家層の主婦層よりも強く描いていることが明らかになった.こういった女子大生の住宅像は, 暖昧なものではあるが, 若年層全体としての住宅像, さらには, これからの住宅の方向を示唆する一つの伏線と考えられる.
ISSN:0913-5227
1882-0352
DOI:10.11428/jhej1987.41.51