高度情報社会と文化変容

社会の情報化に伴って、文化の各領域での変容が進行する。しかし、情報化は必ずしも原因ではない。文化の変容によって情報化が進行し、情報化が文化変容を促す。というか、むしろ、情報化と文化変容は、産業社会の変動のふたつの側面なのである。 '60年代以降、人々の生活様式の変化が著しい-衣食住の形から社会的移動のパターンまで。特に、テレビの普及にはじまるさまざまなメディアの生活への浸透は、社会や生活の中での人間の条件を変えてしまった。人々は孤立し、メディアを擬人化し、メディアに知識情報を求めなくなった。 この現象は、いわゆる価値の多様化と併行して進行した。さまざまな社会的規範が弛緩し、価値の多様...

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Published in社会学評論 Vol. 35; no. 3; pp. 308 - 318,383
Main Author 中野, 収
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本社会学会 31.12.1984
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ISSN0021-5414
1884-2755
DOI10.4057/jsr.35.308

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Summary:社会の情報化に伴って、文化の各領域での変容が進行する。しかし、情報化は必ずしも原因ではない。文化の変容によって情報化が進行し、情報化が文化変容を促す。というか、むしろ、情報化と文化変容は、産業社会の変動のふたつの側面なのである。 '60年代以降、人々の生活様式の変化が著しい-衣食住の形から社会的移動のパターンまで。特に、テレビの普及にはじまるさまざまなメディアの生活への浸透は、社会や生活の中での人間の条件を変えてしまった。人々は孤立し、メディアを擬人化し、メディアに知識情報を求めなくなった。 この現象は、いわゆる価値の多様化と併行して進行した。さまざまな社会的規範が弛緩し、価値の多様化が進み、社会的逸脱が常態化した。その結果、社会的表象を解読するコードが、不安定になり、流動化した。 こうした社会的規範の極度に弛緩した時代に、文化創造は、どのような形で、いかにして可能なのだろうか。新しい生活様式は、明らかに文化の創造であった。たしかに、, 60年代は文化的に多産な時期であった。しかし、現在、音楽、絵画、文学、映画、演劇における創造の主要な形態は、引用と模倣と剽窃とパロディにとどまっており、創造の名に値する創造は、極めてマイナーな領域で行われているにすぎない。
ISSN:0021-5414
1884-2755
DOI:10.4057/jsr.35.308