覚せい剤使用の「犯罪化」・「医療化」論に関する再検討 「相互作用レベル」における社会的介入に注目して

戦後初期の「ヒロポン禍」と呼ばれた時代(1940年代後半〜1950年代半ば)における,覚せい剤使用の「問題化」過程と,それに対する社会的介入のあり方について,試論的な考察を行うことが本論文の目的である.従来の社会学・犯罪社会学関連領域において,上記のテーマは,覚せい剤使用の「犯罪化」と「医療化」が共時平行的に進行することを含意する,「犯罪化」/「医療化」テーゼとして説明されてきた.本論文では,いったん社会学的カテゴリとしての「犯罪化」「医療化」に関する議論に内在的に立ち戻り,そこでの検討を通して「犯罪化」「医療化」カテゴリを再構成して提示する.その後,そこから得られた枠組みを用いて,この時期の...

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Published in犯罪社会学研究 Vol. 30; pp. 119 - 137
Main Author 平井, 秀幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本犯罪社会学会 2005
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Summary:戦後初期の「ヒロポン禍」と呼ばれた時代(1940年代後半〜1950年代半ば)における,覚せい剤使用の「問題化」過程と,それに対する社会的介入のあり方について,試論的な考察を行うことが本論文の目的である.従来の社会学・犯罪社会学関連領域において,上記のテーマは,覚せい剤使用の「犯罪化」と「医療化」が共時平行的に進行することを含意する,「犯罪化」/「医療化」テーゼとして説明されてきた.本論文では,いったん社会学的カテゴリとしての「犯罪化」「医療化」に関する議論に内在的に立ち戻り,そこでの検討を通して「犯罪化」「医療化」カテゴリを再構成して提示する.その後,そこから得られた枠組みを用いて,この時期の覚せい剤使用の「犯罪化」「医療化」の分析を,主に「相互作用レベル」と「矯正処遇」「精神医学的治療」に注目しながら行う.それにより,従来「概念・制度レベル」において論じられてきた「犯罪化」/「医療化」テーゼを,「相互作用レベル」において検討した場合,必ずしも,高い「度合い」で「犯罪化」および「医療化」が進行したとはいえないことを明らかにする.
ISSN:0386-460X
2424-1695
DOI:10.20621/jjscrim.30.0_119