地域在住高齢者の認知・神経行動機能および心機能に対する高血圧の影響 5年間の縦断的検討

近年, 高血圧が脳・心血管疾患を引き起こすのみでなく, 高齢者の認知機能や神経行動機能も低下させることが報告されている. さらに高齢者において, 高血圧は自立生活を障害して要介護状態に至る原因としても注目されている. しかし, 日常生活動作 (activities of daily living; ADL) の自立を維持している健常高齢者においても, 高血圧や加齢が認知・神経行動機能や心機能に潜在的な影響を及ぼすか否かについては明らかでない. 【対象・方法】基本的ADLが自立維持された地域在住の健常高齢者25名 (平均69±3歳) を対象に, 加齢と高血圧が認知・神経行動機能および心機能に及ぼ...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 40; no. 4; pp. 375 - 380
Main Authors 土居, 義典, 近森, 大志郎, 西永, 正典, 濱田, 富雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.07.2003
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.40.375

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Summary:近年, 高血圧が脳・心血管疾患を引き起こすのみでなく, 高齢者の認知機能や神経行動機能も低下させることが報告されている. さらに高齢者において, 高血圧は自立生活を障害して要介護状態に至る原因としても注目されている. しかし, 日常生活動作 (activities of daily living; ADL) の自立を維持している健常高齢者においても, 高血圧や加齢が認知・神経行動機能や心機能に潜在的な影響を及ぼすか否かについては明らかでない. 【対象・方法】基本的ADLが自立維持された地域在住の健常高齢者25名 (平均69±3歳) を対象に, 加齢と高血圧が認知・神経行動機能および心機能に及ぼす影響について心エコー図検査, 自由行動下血圧測定, 認知・神経行動機能検査を用いて5年間の追跡調査を行った. 【結果】1) 左室心筋重量: 高血圧群では正常血圧群に比して, 5年間で有意に増加した (変化率; +5.3%vs. -0.8%, P=0.03). 2) non-dipper: 高血圧群で5年間でその割合が増加した (初回; 20% (2/10名) vs. 追跡時; 58% (7/12名), p=0.04). 3) 高次神経行動機能評価スコア: 高血圧群では正常血圧群に比し, 5年間で有意に低下した (初回; 2,344±110vs. 2,380±102, ns, 追跡時; 2,149±181vs. 2,356±159, p=0.04). 【結論】基本的ADLが5年間自立維持されていても, 高血圧は潜在的な臓器障害を進行させ, 神経行動機能の低下に影響していた. 高血圧のコントロールは心血管事故の予防だけでなく, 高齢者の生活の質を維持する上でも重要である.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.40.375