農村家族の生活周期と生産共同組織

現代の農村社会においては、多様な生産共同組織の創出・展開による「地域農業の組織化」が進行している。この動向は農村社会が地域社会として新たに再編成されつつあることを示している。こうした社会的現実は従来の農村研究の理論的枠組によってはカバーしきれない新しい研究領域をつくり出している。 本稿はこのような農村社会の再編化を生み出している機能集団としての農業生産共同組織をとり上げ、それが農村家族の変容過程とどのような関連を有しているかについて分析を試みた。その際、両者の関連を昭和三五年から昭和五〇年に亘る一五年間の縦断的研究として取り扱い、そこに家族周期研究法を適用したことが本稿の特色となっている。ここ...

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Published in社会学評論 Vol. 28; no. 3; pp. 2 - 27
Main Author 杉岡, 直人
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本社会学会 28.02.1978
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ISSN0021-5414
1884-2755
DOI10.4057/jsr.28.2

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Summary:現代の農村社会においては、多様な生産共同組織の創出・展開による「地域農業の組織化」が進行している。この動向は農村社会が地域社会として新たに再編成されつつあることを示している。こうした社会的現実は従来の農村研究の理論的枠組によってはカバーしきれない新しい研究領域をつくり出している。 本稿はこのような農村社会の再編化を生み出している機能集団としての農業生産共同組織をとり上げ、それが農村家族の変容過程とどのような関連を有しているかについて分析を試みた。その際、両者の関連を昭和三五年から昭和五〇年に亘る一五年間の縦断的研究として取り扱い、そこに家族周期研究法を適用したことが本稿の特色となっている。ここで取り上げた生産共同組織は北海道の一農村における農業法人組織と機械利用組織の二つである。 分析の結果を要約するならば以下の如くである。 (一) いずれの生産組織においても、それぞれの分化・再編の変容過程を家族周期によって整理するならば同じような周期段階にあるものの結合と分離が変容の契機となっている。 (二) 農業法人組織の変容過程においては、集団の分化過程における一種の同質化現象が認められる。 (三) 二つの機能集団の結合原理を部落内の親族ネットワークとの関連で捉えるとき、多くの親族関係が存在しているにもかかわらず、いずれのケースにおいても生産上の互助・協力の関係がみられない。この事実は農家がそれぞれの生活現実に対応した主体的かつ目的合理的な結合原理によって結びついていることを示している。 以上の分析から機能集団としての農業生産組織を軸とした農村社会変動を研究する上で家族周期研究法の有効性が主張しうる。
ISSN:0021-5414
1884-2755
DOI:10.4057/jsr.28.2