学力格差と「学校の効果」 (<緊急特集>「格差社会」と教育の課題) 小学校の学力テスト分析から

本稿の第一の目的は、わが国の「学力の格差」問題について、学力データを用いてその現状を分析することである。その上で、「学力の格差」を縮小するために、学校に何ができるのかということについて議論する。その際に、欧米の学校効果研究の中で、注目を集めている「効果のある学校」という考え方に着目する。「効果のある学校」とは、「社会的・経済的に不利な立場におかれやすい層の子どもたちの学力を保障している学校」のことである。 本稿の分析からは、「学力の格差」は、たんに上の層と下の層のあいだに差があるというだけではなく、下の層の学力がとくに落ち込んでいる現象であるということが言える。しかし同時に、下の子どもたちの学...

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Published in教育学研究 Vol. 73; no. 4; pp. 350 - 362
Main Author 川口, 俊明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本教育学会 29.12.2006
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Summary:本稿の第一の目的は、わが国の「学力の格差」問題について、学力データを用いてその現状を分析することである。その上で、「学力の格差」を縮小するために、学校に何ができるのかということについて議論する。その際に、欧米の学校効果研究の中で、注目を集めている「効果のある学校」という考え方に着目する。「効果のある学校」とは、「社会的・経済的に不利な立場におかれやすい層の子どもたちの学力を保障している学校」のことである。 本稿の分析からは、「学力の格差」は、たんに上の層と下の層のあいだに差があるというだけではなく、下の層の学力がとくに落ち込んでいる現象であるということが言える。しかし同時に、下の子どもたちの学力を保障している学校=「効果のある学校」の存在も確認された。そして、「効果のある学校」には、「学習への専心」「クラスの雰囲気」といった要素が特徴的であることを指摘した。
ISSN:0387-3161
2187-5278
DOI:10.11555/kyoiku.73.4_350