術前診断しえた横隔膜傍裂孔ヘルニアの1例

症例は67歳の女性で,主訴は食事摂取後の胸背部痛である.当院内科での上部消化管造影検査で左横隔膜上にくびれを持って嚢状に突出する胃穹隆部を認めたため,傍食道型食道裂孔ヘルニアと診断された.その後に行われた食道内圧検査,24時間食道pHモニタリングでは胃食道逆流症を示唆する所見はなかった.CT像を詳細に検討すると,腹部食道と左横隔膜上に脱出する胃の間に左横隔膜脚を認めたため,横隔膜傍裂孔ヘルニアと診断した.腹腔鏡下にヘルニア内容の還納,ヘルニア門の縫縮を行った.横隔膜傍裂孔ヘルニアは傍食道型食道裂孔ヘルニアと臨床像,画像所見が似ているため正しく術前診断されないことが多く,これまでその多くは手術中...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 44; no. 8; pp. 1062 - 1069
Main Authors 大森, 健治, 宮田, 完志, 湯浅, 典博, 竹内, 英司, 後藤, 康友, 三宅, 秀夫, 高橋, 崇真, 雄谷, 慎吾, 小林, 陽一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.08.2011
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Summary:症例は67歳の女性で,主訴は食事摂取後の胸背部痛である.当院内科での上部消化管造影検査で左横隔膜上にくびれを持って嚢状に突出する胃穹隆部を認めたため,傍食道型食道裂孔ヘルニアと診断された.その後に行われた食道内圧検査,24時間食道pHモニタリングでは胃食道逆流症を示唆する所見はなかった.CT像を詳細に検討すると,腹部食道と左横隔膜上に脱出する胃の間に左横隔膜脚を認めたため,横隔膜傍裂孔ヘルニアと診断した.腹腔鏡下にヘルニア内容の還納,ヘルニア門の縫縮を行った.横隔膜傍裂孔ヘルニアは傍食道型食道裂孔ヘルニアと臨床像,画像所見が似ているため正しく術前診断されないことが多く,これまでその多くは手術中に診断されてきた.傍食道型食道裂孔ヘルニアでは噴門形成術が必要なことが多いが,横隔膜傍裂孔ヘルニアでは噴門形成術は原則として不要である.病態の理解・治療の観点からも両者は正しく区別されるべきである.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.44.1062