ヒト肝可溶性抗原に対するマウスモノクローナル抗体とそのイディオタイプ表出ヒト型抗体 (LSIA) の検出とその臨床的意義
自己免疫性肝炎(AIH)は, 現在自己抗体の出現により大きく三つのタイプに分類されている. 抗核抗体や抗平滑筋抗体陽性のタイプ1, 肝腎ミクロゾーム(LKM)-1抗体陽性のタイプ2, そして肝可溶性抗原に対する抗体が陽性のタイプ3である1). そのうち, タイプ3にみられる抗体は, 肝細胞膜に対する抗体を含み, 抗体依存性の肝細胞害(ADCC)を惹起するものとして, AIHの病態を説明するうえできわめて好都合なものとして考えられてきた1). C型肝炎ウイルス(HCV)に代表されるごとく, 肝炎慢性化の原因の一つとしてウイルスの遺伝子変異に基づく免疫機構からの逃避が考えられているが, それとは別...
Saved in:
Published in | 炎症 Vol. 16; no. 2; pp. 117 - 124 |
---|---|
Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本炎症・再生医学会
18.03.1996
日本炎症学会 |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0389-4290 1884-4006 |
DOI | 10.2492/jsir1981.16.117 |
Cover
Loading…
Summary: | 自己免疫性肝炎(AIH)は, 現在自己抗体の出現により大きく三つのタイプに分類されている. 抗核抗体や抗平滑筋抗体陽性のタイプ1, 肝腎ミクロゾーム(LKM)-1抗体陽性のタイプ2, そして肝可溶性抗原に対する抗体が陽性のタイプ3である1). そのうち, タイプ3にみられる抗体は, 肝細胞膜に対する抗体を含み, 抗体依存性の肝細胞害(ADCC)を惹起するものとして, AIHの病態を説明するうえできわめて好都合なものとして考えられてきた1). C型肝炎ウイルス(HCV)に代表されるごとく, 肝炎慢性化の原因の一つとしてウイルスの遺伝子変異に基づく免疫機構からの逃避が考えられているが, それとは別に, 自己肝細胞に対する自己免疫反応も慢性化の一因として考えられてきた2). 筆者らは, ヒト肝ホモジネートの超遠沈上清をBALB/cマウスに免疫後, マウスミエローマ細胞P3NS1とのハイブリドーマを得て, 肝細胞に反応するモノクローナル抗体(MAb)を作成した. それらのなかから, 種特異的, 臓器特異的MAbが得られ, それをH2-MAbと名付けた3, 4). その後の検討で, H2-MAbはヒト肝細胞の核膜近傍, 粗面小包体, 細胞膜に反応し, 分子量15,000Daの糖蛋白質を認識することが示唆された5). H2-MAbは, 肝細胞膜に反応する抗体であることから, この抗体が認識する抗原(肝特異抗原)が肝臓における自己免疫反応の標的抗原となりうる可能性がある. 現在までにこの抗体の認識する抗原のクローニングには成功していないが, 臨床的な価値が存在すればさらに追及する必要性が生ずる. こうした背景をもとに, 本研究では, 慢性肝疾患患者の血清中に肝特異抗原を認識するヒト型抗体が存在するか否か, そしてもし存在するならば, その抗体の性質を検討することを目的とした. |
---|---|
ISSN: | 0389-4290 1884-4006 |
DOI: | 10.2492/jsir1981.16.117 |