造血幹細胞の微小環境「ニッチ」

幹細胞は「自分と同じ細胞と造り出す (自己複製) と同時に, 様々な種類の細胞に分化する能力 (多分化能) を持つ細胞」であり, 様々な組織・臓器でその維持・再生を担い, 幹細胞とは個体の一生を通じて, 枯渇することなく, 娘細胞を供給する. このような幹細胞システムの維持は生命の維持にとってきわめて重要である. 成体の各組織における幹細胞システムは, 幹細胞と隣接する細胞・組織との相互作用によって成り立っている. この幹細胞が維持・増殖する部位は「幹細胞ニッチ」と呼ばれ, 幹細胞はニッチにおいて細胞周期を静止した状態に保つことで, 長期にわたりその未分化性を維持していると想定される.「ニッチ...

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Published in生物物理化学 Vol. 48; no. 4; pp. 133 - 138
Main Authors 須田, 年生, 新井, 文用, 平尾, 敦
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本電気泳動学会 2004
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ISSN0031-9082
1349-9785
DOI10.2198/sbk.48.133

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Summary:幹細胞は「自分と同じ細胞と造り出す (自己複製) と同時に, 様々な種類の細胞に分化する能力 (多分化能) を持つ細胞」であり, 様々な組織・臓器でその維持・再生を担い, 幹細胞とは個体の一生を通じて, 枯渇することなく, 娘細胞を供給する. このような幹細胞システムの維持は生命の維持にとってきわめて重要である. 成体の各組織における幹細胞システムは, 幹細胞と隣接する細胞・組織との相互作用によって成り立っている. この幹細胞が維持・増殖する部位は「幹細胞ニッチ」と呼ばれ, 幹細胞はニッチにおいて細胞周期を静止した状態に保つことで, 長期にわたりその未分化性を維持していると想定される.「ニッチ」という概念は, 1970年代にヒトの造血幹細胞おいて提唱されたものであり, 概念的に, 幹細胞と幹細胞に影響を与える支持細胞などから構成されるものである. 今後, 幹細胞のニッチを制御する分子機構を理解することによって, 幹細胞の自己複製・分化といった「幹細胞の本体」の解明につながると考えられる.
ISSN:0031-9082
1349-9785
DOI:10.2198/sbk.48.133