ワーク・ライフ・バランスの職場環境 労働市場の女性化をめぐる問題
少子高齢化を迎え,わが国では労働生産人口の深刻な減少が生じると予想される。その対応として,政府は,女性が働きやすい社会に向けてワーク・ライフ・バランス(以下,WLBと略)政策を進めている。女性の多数が結婚や出産を機に仕事を辞め,専業主婦として家事や育児を担ってきた時代を経て,女性たちは外で働くようになった。われわれはこの社会過程を「労働市場の女性化」と呼ぶ。女性たちは,家庭役割をもつ労働者として労働市場に登場する。そのため,WLBのコンセンサスがない社会では,仕事と家庭の調整を,パートタイム労働の選択によって個人的に行わざるを得なかったといえる。近年におけるWLBの取組は社会の側からの調整の動...
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Published in | 現代社会学研究 Vol. 27; pp. 19 - 36 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北海道社会学会
2014
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Subjects | |
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ISSN | 0915-1214 2186-6163 |
DOI | 10.7129/hokkaidoshakai.27.19 |
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Summary: | 少子高齢化を迎え,わが国では労働生産人口の深刻な減少が生じると予想される。その対応として,政府は,女性が働きやすい社会に向けてワーク・ライフ・バランス(以下,WLBと略)政策を進めている。女性の多数が結婚や出産を機に仕事を辞め,専業主婦として家事や育児を担ってきた時代を経て,女性たちは外で働くようになった。われわれはこの社会過程を「労働市場の女性化」と呼ぶ。女性たちは,家庭役割をもつ労働者として労働市場に登場する。そのため,WLBのコンセンサスがない社会では,仕事と家庭の調整を,パートタイム労働の選択によって個人的に行わざるを得なかったといえる。近年におけるWLBの取組は社会の側からの調整の動きであり,社会が女性の就労継続を促す時代に入ったことを意味する。本稿では,⑴企業規模によるWLBの取組の進展度,⑵WLBの取組事例,⑶職場内の調整に焦点をあて,女性の就業継続条件の検討を行った。その結果,次のことが明らかとなった。1)大企業ほど,育児休業後職場復帰した女性にとって勤務時間の選択が可能な制度の導入が進む。2)WLBの職場環境改善により,子育てなど負担の大きい家庭役割を担う女性の就業継続が促進されている。勤務形態に加えて,職種変更や地位・雇用形態の変更による調整がなされる場合がある。3)規模が小さい企業での取組は遅れている。課題として,WLB政策が開く労働市場の女性化の新たな局面において,正規職と非正規職の均等待遇,非正規職と正規職とを柔軟に選択できるシステムの可能性が問われる。 |
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ISSN: | 0915-1214 2186-6163 |
DOI: | 10.7129/hokkaidoshakai.27.19 |