膵仮性嚢胞に合併した左側門脈圧亢進症の1治験例

症例は54歳男性.吐血を主訴に近医を受診した.腹部超音波, 胃内視鏡にて膵嚢胞とredcolorsign (Rcsign) 陽性の孤立性胃静脈瘤を指摘され当院へ紹介受診となった.血液検査所見でHb4.5g/dlと強度貧血を認め同日入院となった.入院後の諸検査の結果, 膵尾部に直径11cmの嚢胞を認めた.肝硬変の所見は認めなかった.腹部血管造影検査では脾静脈は描出されず, 胃宵隆部に環状の静脈瘤を認めた.左胃静脈は著明に拡張し, 門脈本幹に流入していた.膵仮性嚢胞による左側門脈圧亢進症に伴う胃静脈瘤と診断し, 平成12年11月15日嚢胞を含めた膵体尾部切除, 脾摘, 胃上部大弯側副血行郭清術を施...

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Published in日本門脈圧亢進症学会雑誌 Vol. 8; no. 2; pp. 110 - 114
Main Authors 千野, 修, 久保田, 光博, 杉田, 輝地, 島田, 英雄, 幕内, 博康, 伊東, 英輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本門脈圧亢進症学会 30.11.2002
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ISSN1344-8447
2186-6376
DOI10.11423/jsph1999.8.2_110

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Summary:症例は54歳男性.吐血を主訴に近医を受診した.腹部超音波, 胃内視鏡にて膵嚢胞とredcolorsign (Rcsign) 陽性の孤立性胃静脈瘤を指摘され当院へ紹介受診となった.血液検査所見でHb4.5g/dlと強度貧血を認め同日入院となった.入院後の諸検査の結果, 膵尾部に直径11cmの嚢胞を認めた.肝硬変の所見は認めなかった.腹部血管造影検査では脾静脈は描出されず, 胃宵隆部に環状の静脈瘤を認めた.左胃静脈は著明に拡張し, 門脈本幹に流入していた.膵仮性嚢胞による左側門脈圧亢進症に伴う胃静脈瘤と診断し, 平成12年11月15日嚢胞を含めた膵体尾部切除, 脾摘, 胃上部大弯側副血行郭清術を施行した.術後経過は良好であった.脾静脈は解剖学的特徴から種々の膵疾患, 外傷, 後腹膜腫瘍などにより狭窄や閉塞を呈し孤立性胃静脈瘤の原因になることが知られている.慢性膵炎の経過中に消化管出血をみた場合, 本病態にも十分留意する必要があると思われた.
ISSN:1344-8447
2186-6376
DOI:10.11423/jsph1999.8.2_110