上顎骨の発育不全を伴う両側性口唇口蓋裂患者への上顎骨延長術の経験 REDシステムを応用して
第一期治療の上顎前方牽引装置が奏効しなかった著しい上顎骨劣成長を伴う両側性口唇口蓋裂患者に対し,陥凹した中顔面の審美的改善を得るために創外型上顎骨延長装置Rigid external distraction system(以後,REDシステム)を応用した上顎骨延長術を経験し,若干の知見を得たので報告する. 症例は治療開始時年齢9歳11ヵ月の女子で,両側性口唇口蓋裂に起因する咬合異常のため当科を受診した.第一期治療は,上顎骨成長促進のため上顎前方牽引装置を約2年8ヵ月用いたが奏効せず,依然著しい上顎骨発育障害を呈していた.そこで,治療方針をREDシステムによる上顎骨延長術に変更し,下顎後退術およ...
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Published in | 日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 27; no. 3; pp. 350 - 365 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口蓋裂学会
30.10.2002
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Subjects | |
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ISSN | 0386-5185 2186-5701 |
DOI | 10.11224/cleftpalate1976.27.3_350 |
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Summary: | 第一期治療の上顎前方牽引装置が奏効しなかった著しい上顎骨劣成長を伴う両側性口唇口蓋裂患者に対し,陥凹した中顔面の審美的改善を得るために創外型上顎骨延長装置Rigid external distraction system(以後,REDシステム)を応用した上顎骨延長術を経験し,若干の知見を得たので報告する. 症例は治療開始時年齢9歳11ヵ月の女子で,両側性口唇口蓋裂に起因する咬合異常のため当科を受診した.第一期治療は,上顎骨成長促進のため上顎前方牽引装置を約2年8ヵ月用いたが奏効せず,依然著しい上顎骨発育障害を呈していた.そこで,治療方針をREDシステムによる上顎骨延長術に変更し,下顎後退術およびオトガイ形成術を併用することとした. 上顎骨の移動様相は,側貌セファロ分析および上顎骨に埋入したメタルインプラントピン(以後,骨内マーカー)を用いて評価した.延長に際し,REDシステムの延長スクリューは34mm延長したにもかかわらず,骨内マーカーの前方移動は約7.5mmを示し,スクリュー部の延長量に比べ,上顎骨の移動量は少なかった.スクリュー延長量に比べ移動量が少なかった原因として,索引フックの変形,牽引装置の位置変化の他,口唇口蓋裂術後療痕組織などの緊張により,延長方向や上顎骨の前方移動が抑制されたこと,切歯骨のひずみなどが重複したためと思われた.しかしながら,延長量は初期目標の8mmにほぼ到達しており,また,延長後の上顎骨の後戻りはほとんど認められず,安定していた. |
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ISSN: | 0386-5185 2186-5701 |
DOI: | 10.11224/cleftpalate1976.27.3_350 |