原因不明の肝外門脈閉塞に伴う十二指腸,空腸静脈瘤の1例

症例は69歳の男性で,主訴はタール便で,上部消化管内視鏡で異常所見を認めなかった.絶食で下血は治まるが,経口摂取にて下血,貧血が続いたので,CTを施行し小腸静脈瘤を疑った.血管造影検査にて上腸間膜静脈~門脈,脾静脈の閉塞と十二指腸空腸静脈瘤を認めた.小腸内視鏡で十二指腸~空腸静脈瘤を認め,当科紹介となった.本症例は,静脈瘤が多発し,空腸にまで静脈瘤が存在したため,内視鏡的治療は行えなかった.また,原因不明の肝外門脈閉塞を伴っており血管郭清を伴った十二指腸空腸部分切除は,術後肝不全になる可能性が高かったので,開腹下経回腸静脈静脈瘤塞栓術を施行した.塞栓術後5年以上経過しているが,下血などの再発は...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 44; no. 8; pp. 970 - 977
Main Authors 藤田, 博崇, 梶川, 愛一郎, 篠原, 永光, 大畑, 誠二, 田淵, 寛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.08.2011
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.44.970

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Summary:症例は69歳の男性で,主訴はタール便で,上部消化管内視鏡で異常所見を認めなかった.絶食で下血は治まるが,経口摂取にて下血,貧血が続いたので,CTを施行し小腸静脈瘤を疑った.血管造影検査にて上腸間膜静脈~門脈,脾静脈の閉塞と十二指腸空腸静脈瘤を認めた.小腸内視鏡で十二指腸~空腸静脈瘤を認め,当科紹介となった.本症例は,静脈瘤が多発し,空腸にまで静脈瘤が存在したため,内視鏡的治療は行えなかった.また,原因不明の肝外門脈閉塞を伴っており血管郭清を伴った十二指腸空腸部分切除は,術後肝不全になる可能性が高かったので,開腹下経回腸静脈静脈瘤塞栓術を施行した.塞栓術後5年以上経過しているが,下血などの再発は認めていない.しかし,塞栓した側副血行路が再開通するという報告もあり,今後も厳重な経過観察が必要であると思われる.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.44.970