明恵門下の『大乗起信論』注釈書における真言密教的解釈の相関 『起信論本疏聴集記』と『起信論別記聴集記』を資料として
栂尾高山寺明恵房高弁(一一七三~一二三二)(以下、明恵)は、華厳教学を軸としながらも独自の密教思想に基づいた実践体系を確立したとされる。本稿は、明恵門下の『大乗起信論』解釈に関する聞書である『起信論本疏聴集記』ならびに『起信論別記聴集記』を資料として、それらに真言密教的解釈がどう関わるのかについて検討した。これらはあくまでも『大乗起信論義記』ならびに『大乗起信論別記』の注釈書である。そして、本文には明恵の講義や喜海の講義の内容が反映され、高山寺において華厳教学をいかに継承してきたのか実態を示すものとして従来から注目されてきた。しかし、そこには律師や一心院楽寂房といった高野山の真言僧と思われる僧...
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Published in | 智山学報 Vol. 69; pp. 377 - 389 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
智山勧学会
2020
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Subjects | |
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ISSN | 0286-5661 2424-130X |
DOI | 10.18963/chisangakuho.69.0_377 |
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Summary: | 栂尾高山寺明恵房高弁(一一七三~一二三二)(以下、明恵)は、華厳教学を軸としながらも独自の密教思想に基づいた実践体系を確立したとされる。本稿は、明恵門下の『大乗起信論』解釈に関する聞書である『起信論本疏聴集記』ならびに『起信論別記聴集記』を資料として、それらに真言密教的解釈がどう関わるのかについて検討した。これらはあくまでも『大乗起信論義記』ならびに『大乗起信論別記』の注釈書である。そして、本文には明恵の講義や喜海の講義の内容が反映され、高山寺において華厳教学をいかに継承してきたのか実態を示すものとして従来から注目されてきた。しかし、そこには律師や一心院楽寂房といった高野山の真言僧と思われる僧侶も介在しており、真言観や華厳と真言との関係についての言及もみられる。明恵は、真言と華厳の融合を図ったとされるが、その思想系譜の相互流入の交渉を周辺人物たちの動向を詳しく追ってみることで、推察可能となろう。 |
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ISSN: | 0286-5661 2424-130X |
DOI: | 10.18963/chisangakuho.69.0_377 |