嚥下閾からみた全部床義歯装着者の咀嚼機能評価
本研究では, 食物の粉砕から食塊形成までの一連の機能を評価する方法を確立することを目的として, ピーナッツ咀嚼による咀嚼効率の測定, 嚥下閾に至るまでの咀嚼回数ならびにそのときの食塊の物性を測定し, 検討を加えた. 被験者は, 顎口腔系機能に自覚的・他覚的な異常が認められない正常有歯顎者男性9名 (有歯顎群: 平均年齢30.1±3.5歳) と本学歯科内科クリニック総合診療室で無歯顎補綴治療を受け, 良好な経過を辿っている上下顎全部床義歯装着者男性8名 (全部床群: 平均年齢68.3±4.9歳) である. なお, 実験はすべての被験者に対してその趣旨を十分に説明し, 同意を得た上で開始した.得ら...
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Published in | 日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 51; no. 1; pp. 42 - 48 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本補綴歯科学会
10.01.2007
日本補綴歯科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0389-5386 1883-177X |
DOI | 10.2186/jjps.51.42 |
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Summary: | 本研究では, 食物の粉砕から食塊形成までの一連の機能を評価する方法を確立することを目的として, ピーナッツ咀嚼による咀嚼効率の測定, 嚥下閾に至るまでの咀嚼回数ならびにそのときの食塊の物性を測定し, 検討を加えた. 被験者は, 顎口腔系機能に自覚的・他覚的な異常が認められない正常有歯顎者男性9名 (有歯顎群: 平均年齢30.1±3.5歳) と本学歯科内科クリニック総合診療室で無歯顎補綴治療を受け, 良好な経過を辿っている上下顎全部床義歯装着者男性8名 (全部床群: 平均年齢68.3±4.9歳) である. なお, 実験はすべての被験者に対してその趣旨を十分に説明し, 同意を得た上で開始した.得られた結果は以下の通りである. 1. 嚥下閾におけるピーナッツ食塊の硬さ応力は, 有歯顎群と全部床群との間に有意な差は認められなかった. 2. 嚥下閾に至るまでの咀嚼回数は, 有歯顎群と全部床群との間に有意な差が認められた (P<0.01). 3. 全部床群においては, 有歯顎群に比較して咀嚼効率が低いことを咀嚼回数の増加で補完している可能性が示された. 4. 有歯顎群, 全部床群において, 咀嚼効率と嚥下閾に至るまでの咀嚼回数との間には, ともに負の相関が認められた. 以上の結果から, 全部床義歯装着者におけるピーナッツ咀嚼時の嚥下閾に至るまでの咀嚼回数が摂食・嚥下機能を示すパラメータになり得ることが示された. |
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ISSN: | 0389-5386 1883-177X |
DOI: | 10.2186/jjps.51.42 |