生命保険契約・自殺免責にかかる法制と解釈 ドイツ法制,フランス法制からの示唆
わが国の法制と親和性の高い大陸法系主要国家にあっては,今日,自殺を例外なく免責にする法制(保険法51条1号参照)は放棄され,反対に一定範囲の自殺に保険保護を与えることを強行法として求め,生命保険における遺族補償機能を政策的に高めている。自殺免責を完全に私的自治(自由)に委ねるわが国の法政策については,遺族補償機能という観点のほか,保険料計算(生命表)のなかに自殺保障のための対価は支払われている事実に即しても,再考が必要である。また,ドイツ・フランスの議論では,精神障害中の自殺も,自殺(死の結果に対する認識はある行為)であるが,しかし死の選択に対する自身の利害得失の比較検討が,冷静・客観的に,あ...
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Published in | 保険学雑誌 Vol. 2018; no. 642; pp. 642_1 - 642_30 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本保険学会
30.09.2018
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Subjects | |
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Summary: | わが国の法制と親和性の高い大陸法系主要国家にあっては,今日,自殺を例外なく免責にする法制(保険法51条1号参照)は放棄され,反対に一定範囲の自殺に保険保護を与えることを強行法として求め,生命保険における遺族補償機能を政策的に高めている。自殺免責を完全に私的自治(自由)に委ねるわが国の法政策については,遺族補償機能という観点のほか,保険料計算(生命表)のなかに自殺保障のための対価は支払われている事実に即しても,再考が必要である。また,ドイツ・フランスの議論では,精神障害中の自殺も,自殺(死の結果に対する認識はある行為)であるが,しかし死の選択に対する自身の利害得失の比較検討が,冷静・客観的に,あるいは,理性的な熟慮を伴って行われなかった上での自殺と整理され,そのように自由な意思決定を欠くことと,故意の欠如とは同義に解されていない。このような解釈はわが国の法解釈・法制にも採用されるべきである。 |
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ISSN: | 0387-2939 2185-5064 |
DOI: | 10.5609/jsis.2018.642_1 |