口腔外骨延長装置を下顎両側に用いた開咬症の1例

緒言 骨格性開咬症の外科的矯正治療には様々な手術法が試みられている. しかし開咬症は, 術後早期の後戻りが生じやすい1-5)といわれ, 顎変形症の中でも治療方法が難しい不正咬合のひとつである. 今回われわれは, 顎関節症を伴う成人の開咬症に対して, 下顎咬合平面を修正するために下顎骨の骨延長と下顎下縁平面の角度の変更を同時に行い, 良 好な結果をえた症例を経験したので報告する. 症例 患者:52歳, 女性 主訴:咬合不全 家族歴:特記事項なし 既往歴:49歳時脳内出血 現病歴:49歳時の脳内出血に対する手術後から開咬状態になり, また左顎関節部の持続的な疼痛を生じていた. その1年後には小臼歯...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 11; no. 1; pp. 53 - 57
Main Authors 青木伸二郎, 斉藤友克, 筑丸寛, 福山英治, 大村進, 藤田浄秀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎変形症学会 15.04.2001
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Summary:緒言 骨格性開咬症の外科的矯正治療には様々な手術法が試みられている. しかし開咬症は, 術後早期の後戻りが生じやすい1-5)といわれ, 顎変形症の中でも治療方法が難しい不正咬合のひとつである. 今回われわれは, 顎関節症を伴う成人の開咬症に対して, 下顎咬合平面を修正するために下顎骨の骨延長と下顎下縁平面の角度の変更を同時に行い, 良 好な結果をえた症例を経験したので報告する. 症例 患者:52歳, 女性 主訴:咬合不全 家族歴:特記事項なし 既往歴:49歳時脳内出血 現病歴:49歳時の脳内出血に対する手術後から開咬状態になり, また左顎関節部の持続的な疼痛を生じていた. その1年後には小臼歯の咬合接触ができなくなり関節症状が強くなったため, 平成9年7月14日当科を初診した. 両側顎関節症および骨格性開咬症の診断で, 顎関節に対しては保存的治療を開始したが効果なく, 51歳時に左側関節円板剥離授動術が施行された. その後顎関節症状は改善したが, 大臼歯の咬合負担が強く, 関節症状の再燃が懸念され, また咀嚼障害, 顎変形の改善の希望が強かったため, 外科的治療を行うこととなった. 現症:全身所見は, 体格小柄で栄養状態は良好. 口腔外所見では正貌は左右対称で, 側貌は上顎前突でオトガイの後退を呈していた. 口腔内所見では校合接触は最後方臼歯のみで, 開咬を呈しておりoverbiteは-12mm, overjet は4mmであった. 左側第1大臼歯は欠損して第23大臼歯は近心傾斜していた(Fig. 1). 側面頭部X線規格写真所見:mandibular plane angle:46°, gonial angle:131°, SNB:76°, Y-axis:72°, 1 to 1:113°で, 下顎が回転し, かつ後退した骨格性の開咬症であった. また顎関節突起の下顎頭部は軽度に扁平化 していた.
ISSN:0916-7048
DOI:10.5927/jjjd1991.11.53