左開胸・超低体温下全身逆行性循環による大動脈手術 10年間の経験

1998年より遠位弓部・下行大動脈手術の補助手段として,左開胸下に順行性灌流を基本とする体外循環と超低体温下全身逆行性循環法を組合せて使用したので,その経験を報告する.対象は遠位弓部大動脈瘤22例,B型大動脈解離3例で緊急手術例は4例であった.手術手技は人工血管置換21例,パッチ形成4例であった.順行性灌流のための送血部位は右腋窩動脈6例,上行大動脈12例で,7例はこれらの部位に動脈硬化病変が存在したので左大腿動脈を選択した.手術時間477±89分,体外循環時間206±52分,全身逆行性循環時間40±12分であった.病院死亡4例(16%,肺炎,感染瘤再破裂1例,脳梗塞2例)で,他の21例は耐術...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 39; no. 1; pp. 9 - 13
Main Authors 堀内, 和隆, 寺田, 貴史, 湯浅, 毅, 平岩, 伸彦, 保浦, 賢三, 長谷川, 雅彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.01.2010
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.39.9

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Summary:1998年より遠位弓部・下行大動脈手術の補助手段として,左開胸下に順行性灌流を基本とする体外循環と超低体温下全身逆行性循環法を組合せて使用したので,その経験を報告する.対象は遠位弓部大動脈瘤22例,B型大動脈解離3例で緊急手術例は4例であった.手術手技は人工血管置換21例,パッチ形成4例であった.順行性灌流のための送血部位は右腋窩動脈6例,上行大動脈12例で,7例はこれらの部位に動脈硬化病変が存在したので左大腿動脈を選択した.手術時間477±89分,体外循環時間206±52分,全身逆行性循環時間40±12分であった.病院死亡4例(16%,肺炎,感染瘤再破裂1例,脳梗塞2例)で,他の21例は耐術退院可能であった.重篤な合併症は脳神経障害4例(一過性痙攣1例,一過性対麻痺1例,脳梗塞2例)であった.脳障害例を除く術後覚醒時間は12.1±5.5時間で,心筋については新規異常Q波を認めた症例はなく,呼吸に関しては術後48時間以内の人工呼吸器離脱は16例であった.腹部臓器機能に関しては,新規透析導入や肝障害,イレウスおよび消化管出血例は認めなかった.本法は左開胸による大動脈手術の有効な補助手段であるが,送血部位選択や吻合時操作に十分な注意と工夫を加えれば,更なる成績向上が期待される.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.39.9