スポーツ観戦者の社会的属性の検証 社会経済的地位と性別の観点から

本稿の目的は、スポーツ観戦者の社会的属性を解明することである。本研究ではスポーツ観戦を一種の文化消費、つまり趣味と定義して議論を展開した。従来の研究では、社会的属性、特に世帯年収、学歴、職業といった社会経済的地位および性別と文化消費の関連を議論してきた。本研究においても、社会階層および性別と文化消費の関連に関する理論を基に、スポーツ観戦者の社会経済的地位および性別を分析した。本研究では、スポーツライフ・データ2018の二次データを用いた潜在クラスモデル分析により、スポーツ観戦者の社会的属性を検証した。分析の結果、以下のことが明らかになった。まず、スポーツ観戦者の類型として、多くのスポーツを網羅...

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Published inスポーツ社会学研究 Vol. 30; no. 2; pp. 101 - 113
Main Author 下窪, 拓也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本スポーツ社会学会 2022
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ISSN0919-2751
2185-8691
DOI10.5987/jjsss.30-2-02

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Summary:本稿の目的は、スポーツ観戦者の社会的属性を解明することである。本研究ではスポーツ観戦を一種の文化消費、つまり趣味と定義して議論を展開した。従来の研究では、社会的属性、特に世帯年収、学歴、職業といった社会経済的地位および性別と文化消費の関連を議論してきた。本研究においても、社会階層および性別と文化消費の関連に関する理論を基に、スポーツ観戦者の社会経済的地位および性別を分析した。本研究では、スポーツライフ・データ2018の二次データを用いた潜在クラスモデル分析により、スポーツ観戦者の社会的属性を検証した。分析の結果、以下のことが明らかになった。まず、スポーツ観戦者の類型として、多くのスポーツを網羅的に観戦し、男性が多く、運動経験の影響を強く受ける高寛容層、寛容性は高寛容層に劣るものの、多様な種目を観戦する女性や高職業階層者が多く属する中寛容層、野球を集中的に観戦し、低・中所得層の男性が多い野球ユニボア層、社会的関心が集まるスポーツイベントのみ観戦し、同居人のいる女性が多いイベントユニボア層、そしてスポーツ観戦に消極的な不活発層の存在が確認された。高寛容層には、スポーツに対する嗜好性の高さが見られた。中寛容層は、スポーツ観戦を社会関係資本獲得のための戦略として用いている可能性と、スポーツ観戦を商品としての文化として消費している可能性があることが議論された。また、ユニボア層においても、大衆文化消費的な動機から野球観戦のみ行う場合と、スポーツへの関心は低いものの社会的関心を集めるイベントのみ消費する場合の、2種類のユニボアが確認された。以上、本研究により得られた知見は、スポーツ観戦者の実態解明の一助となるものである。最後に、本研究の限界と今後の発展可能性を議論した。
ISSN:0919-2751
2185-8691
DOI:10.5987/jjsss.30-2-02