血液透析施設における超多剤耐性結核の集団感染

「要旨」:血液透析施設において, 患者および職員, その家族に超多剤耐性結核の集団感染がみられた. 発端者は血液透析患者である51歳男性で, 7年前に肺結核にて入院加療歴があった. 薬剤耐性はなく, INH+RFP+EBの3剤で治療を行われ治癒した. 2006年6月に肺結核再発の診断で入院となり, HRS(INH+RFP+SM)で治療開始されるもRFP, SM耐性が判明し, INH+EB+LVFX+KMに変更された. 治療開始1年後に増悪がみられ再入院となった際に超多剤耐性結核と診断された. その後, 同患者が血液透析を受けていた病院で看護師を含む職員5人およびその家族1名が結核を発症した....

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Published in結核 Vol. 88; no. 5; pp. 477 - 484
Main Authors 小林弘美, 小柳孝太郎, 加藤収, 小江俊行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核病学会 15.05.2013
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ISSN0022-9776

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Summary:「要旨」:血液透析施設において, 患者および職員, その家族に超多剤耐性結核の集団感染がみられた. 発端者は血液透析患者である51歳男性で, 7年前に肺結核にて入院加療歴があった. 薬剤耐性はなく, INH+RFP+EBの3剤で治療を行われ治癒した. 2006年6月に肺結核再発の診断で入院となり, HRS(INH+RFP+SM)で治療開始されるもRFP, SM耐性が判明し, INH+EB+LVFX+KMに変更された. 治療開始1年後に増悪がみられ再入院となった際に超多剤耐性結核と診断された. その後, 同患者が血液透析を受けていた病院で看護師を含む職員5人およびその家族1名が結核を発症した. 同じ透析室内で勤務していた職員および看護師の家族が発症したこと, 排菌の確認できた5症例で薬剤耐性が一致し, 検索できた3例において薬剤耐性遺伝子変異結果が一致していたことから集団感染と判断した. 耐性菌感染が疑われたため, 潜在性結核感染症(LTBI)の治療は行われなかった. 今回の集団感染の原因として, 発端者の喀痰抗酸菌培養陽性化が結核の再増悪と判断されるまでに4カ月を要したこと, その間に症例2が感染し喉頭・気管支結核を発症したが喘息と診断され結核の診断が遅れたこと, かつ排菌が多かったことが考えられた. 日本国内で超多剤耐性結核の集団感染は検索したかぎりこれまで1報告しかなく, また教訓的な事例と考えられたためここに報告した.
ISSN:0022-9776