未破裂無症候性脳動脈瘤の治療指針
最近の報告では脳動脈瘤の保有率は約5%と考えられており4)5)10), 脳ドックやMRAの普及により, 未破裂無症候性の脳動脈瘤が発見される場合が多くなった. 脳動脈瘤が破裂したさいの死亡率が高いため8), これを未然に防ぐための治療が一般的になりつつある. しかし, 脳動脈瘤の出血率は考えられていたより低く3), 治療はおろかスクリーニングさえ疑問視する意見もある2). 今回, 未破裂無症候性脳動脈瘤に対する治療指針に役立てるため, 当院に入院した患者の治療内容と, 経過観察群ではその後の経過について検討した. 1990年以降1999年までに診断された未破裂無症候性脳動脈瘤について検討を加え...
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Published in | 脳卒中の外科 Vol. 29; no. 4; pp. 282 - 285 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
2001
日本脳卒中の外科学会 |
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Summary: | 最近の報告では脳動脈瘤の保有率は約5%と考えられており4)5)10), 脳ドックやMRAの普及により, 未破裂無症候性の脳動脈瘤が発見される場合が多くなった. 脳動脈瘤が破裂したさいの死亡率が高いため8), これを未然に防ぐための治療が一般的になりつつある. しかし, 脳動脈瘤の出血率は考えられていたより低く3), 治療はおろかスクリーニングさえ疑問視する意見もある2). 今回, 未破裂無症候性脳動脈瘤に対する治療指針に役立てるため, 当院に入院した患者の治療内容と, 経過観察群ではその後の経過について検討した. 1990年以降1999年までに診断された未破裂無症候性脳動脈瘤について検討を加えた. 瘤の圧迫による脳神経症状や頭痛を呈している症例は除いた. また, 破裂脳動脈瘤に伴う多発性脳動脈瘤と脳動静脈奇形に伴う脳動脈瘤も除いた. incidentalにみつかった脳動脈瘤の治療成績と治療しなかった症例についてはできる限り追跡調査を行い, 脳動脈瘤の出血率を算定した. 検討は主にカルテと手術記録に基づいた. また, 追跡調査は外来通院中の症例についてはカルテおよび主治医から, そうでない症例では電話によった. 対象は84例(男38例, 女46例)で, 年齢は34-82歳, 平均56歳であった. 多発性動脈瘤は19例で, 2個あるものは18例, 3個あるものは1例であった. 対象となった脳動脈瘤は104個である. 脳動脈瘤部位はTable1に示すごとくであった. 脳動脈瘤の最大径は, 3-10mmが89個, 11-20mmは14個, 21mm以上は1個であった. 原疾患は, 脳ドックで発見されたもの30例, 頭痛精査でわかったもの20例, 脳血管障害14例(脳梗塞9例, 脳出血5例), 脳腫瘍4例(下垂体腫瘍3例, 前庭神経シュワノーマ1例), 多発性嚢胞腎3例, 髄膜炎, 副鼻腔炎, 家族歴, 意識消失発作, めまいがそれぞれ2例, その他が3例であった. 手術難易度の高くない脳動脈瘤で, 合併症のない症例にはなるべく開頭術を勧めた. |
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ISSN: | 0914-5508 1880-4683 |
DOI: | 10.2335/scs.29.282 |