未破裂脳動脈瘤手術における静脈梗塞

無症候性の未破裂動脈瘤の発見頻度は脳ドック6%, くも膜下出血の家族歴のある人13.9%, この家族歴に加えて高血圧症などのrisk factorを持つ人では32%7)という. 無症候性の未破裂動脈瘤を手術する機会は増加しているが手術適応については議論のあるところである9)14). さらに, 無症候性ゆえ, あらゆる手術合併症が問題となる. これまでも動脈瘤の手術にさいしての静脈損傷について報告がなされているが, 動脈瘤に達するまでの静脈の問題が主に検討されている4)12). 今回, われわれの施設で行った手術のなかで動脈瘤に接した静脈の灌流障害による合併症が問題となった症例を経験したので,...

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Published in脳卒中の外科 Vol. 29; no. 3; pp. 178 - 182
Main Authors 長光, 勉, 長綱, 敏和, 山下, 哲男, 林田, 修, 黒川, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会 2001
日本脳卒中の外科学会
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ISSN0914-5508
1880-4683
DOI10.2335/scs.29.178

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Summary:無症候性の未破裂動脈瘤の発見頻度は脳ドック6%, くも膜下出血の家族歴のある人13.9%, この家族歴に加えて高血圧症などのrisk factorを持つ人では32%7)という. 無症候性の未破裂動脈瘤を手術する機会は増加しているが手術適応については議論のあるところである9)14). さらに, 無症候性ゆえ, あらゆる手術合併症が問題となる. これまでも動脈瘤の手術にさいしての静脈損傷について報告がなされているが, 動脈瘤に達するまでの静脈の問題が主に検討されている4)12). 今回, われわれの施設で行った手術のなかで動脈瘤に接した静脈の灌流障害による合併症が問題となった症例を経験したので, 文献的考察を含めて報告する. 1996年1月1日より1999年12月2日までに当院で手術を行った無症候性未破裂動脈瘤45例を対象とした. 年齢は18歳から74歳, 平均61歳であった. 性別では男8例, 女37例であった. 単発例37例, 多発例8例であった. 動脈瘤の発生部位は中大脳動脈瘤26個, 前交通動脈瘤12個, 内頸動脈瘤10個, 末梢性前大脳動脈瘤3個であった. 全例開頭による直達術が行われ, 血管内手術症例はなかった. ラッピング1例, コーティング1例, 他は全例クリッピングが行われた. なお, 未破裂動脈瘤の手術適応についてはいまだ議論の多いところであるが, 開頭手術の説明と同意に関しては, 過去の報告2)3)5)15)16)を参考に次のように行った. 自然経過では動脈瘤の年間の破裂率1.5%程度, 破裂動脈瘤の平均の大きさ7mm, 初回発作で40-50%が死亡か重篤になるとした. 未破裂での直達手術は社会復帰率94%, 罹病率6%, 死亡率0%と説明した. 破裂後の直達手術では社会復帰率61%, 罹病率27%, 死亡率12%となる. 手術の危険因子は高齢, 全身合併症, 脳血管障害, ウイリス輪後半動脈瘤, 大きな動脈瘤であるとし, 手術の目安を70歳以下, 動脈瘤のサイズ5mm以上, ウイリス動脈輪前半部の動脈瘤と説明した. この目安をはずれるものは, 本人の希望により行った.
ISSN:0914-5508
1880-4683
DOI:10.2335/scs.29.178