二段階口蓋形成手術を施行した片側完全唇顎口蓋裂症例の言語成績 硬口蓋閉鎖後の評価
【目的】当施設の二段階口蓋形成手術法では,初回手術は1歳6ヶ月時に軟口蓋から硬口蓋後半部までを閉鎖,第二回手術は6~7歳時に硬口蓋前半部閉鎖と顎裂骨移植を同時に施行している。本手法による言語機能への影響を評価検討した。 【対象と方法】対象は本手法を完了した片側完全唇顎口蓋裂の連続症例36例である。初回手術は平均1歳8ヶ月時,第二回手術は平均6歳8ヶ月時に施行された。初回手術施行後,硬口蓋前半未閉鎖部が著しく狭小化した18例は閉鎖床を装着しなかった(床無し群)。未閉鎖部が大きく開存していたり,呼気鼻漏出が構音を障害すると判断された18例は閉鎖床を装着した(床有り群)。第二回手術前の平均5歳1ヶ...
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Published in | 日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 49; no. 1; pp. 23 - 35 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口蓋裂学会
2024
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Subjects | |
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ISSN | 0386-5185 2186-5701 |
DOI | 10.11224/cleftpalate.49.23 |
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Summary: | 【目的】当施設の二段階口蓋形成手術法では,初回手術は1歳6ヶ月時に軟口蓋から硬口蓋後半部までを閉鎖,第二回手術は6~7歳時に硬口蓋前半部閉鎖と顎裂骨移植を同時に施行している。本手法による言語機能への影響を評価検討した。 【対象と方法】対象は本手法を完了した片側完全唇顎口蓋裂の連続症例36例である。初回手術は平均1歳8ヶ月時,第二回手術は平均6歳8ヶ月時に施行された。初回手術施行後,硬口蓋前半未閉鎖部が著しく狭小化した18例は閉鎖床を装着しなかった(床無し群)。未閉鎖部が大きく開存していたり,呼気鼻漏出が構音を障害すると判断された18例は閉鎖床を装着した(床有り群)。第二回手術前の平均5歳1ヶ月時(5歳時)と第二回手術後の平均7歳5ヶ月時(硬口蓋閉鎖術後)における鼻咽腔閉鎖機能と構音を評価し,床無し群と床有り群を検討した。 【結果】対象全例では,鼻咽腔閉鎖機能の良好とごく軽度不全の合計比率は5歳時88.9%,硬口蓋閉鎖術後94.4%であった。適正構音獲得比率は5歳時44.4%から閉鎖後61.1%へ増加した。床有り群の鼻咽腔閉鎖機能の良好とごく軽度不全の合計比率は,5歳時では床無し群の100%とくらべて77.8%と有意に低かった。閉鎖後では,鼻咽腔閉鎖機能は両群とも94.4%と有意差なく良好であった。適正構音獲得比率は,5歳時では床無し群55.6%,床有り群33.3%で両群間に有意差はなかった。閉鎖後では床無し群は83.3%に増加したが,床有り群は改善なく38.9%で有意に低かった。 【結論】半数では,閉鎖床を必要とせず5歳時に良好な鼻咽腔閉鎖機能を獲得し,閉鎖後にほとんどが適正構音を獲得した。一方,閉鎖床を必要とした残り半数では,構音障害は第二回手術後に改善されなかった。言語の発達を遅滞なく促すには,硬口蓋未閉鎖部が,遅くとも5歳までに鼻咽腔閉鎖機能獲得を妨害しない程度に縮小している必要があると考えられた。 |
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ISSN: | 0386-5185 2186-5701 |
DOI: | 10.11224/cleftpalate.49.23 |