環境問題とモーダルシフト

近年の地球環境問題は、サミットの場でも取り上げられるほど危機的な状況にある。これまで、環境問題は外部不経済として扱われてきた。そのため、市場経済の下では基本的には解決不能な問題であった。しかし、サミットでの取扱いをみると、もはやこのような取扱いはできなくなっていることを示している。すなわち、環境問題を内部化しなければならないほど深刻な状況になっている。 一方、物流もこれまでになく各方面から注目を浴びている。消費者ニーズや企業の経営戦略の変化に伴い、物流には多品種少量化、多頻度小口化、そしてJIT化が要求されている。そのため、大きく分けて2つの問題が生じている。1つには、労働力不足からくる物流費...

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Published in日本物流学会誌ジャーナル Vol. 1992; no. 1; pp. 63 - 83
Main Author 松尾, 俊彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本物流学会 03.11.1992
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ISSN0919-3782
1884-6858
DOI10.11285/logisticssociety1992.1992.63

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Summary:近年の地球環境問題は、サミットの場でも取り上げられるほど危機的な状況にある。これまで、環境問題は外部不経済として扱われてきた。そのため、市場経済の下では基本的には解決不能な問題であった。しかし、サミットでの取扱いをみると、もはやこのような取扱いはできなくなっていることを示している。すなわち、環境問題を内部化しなければならないほど深刻な状況になっている。 一方、物流もこれまでになく各方面から注目を浴びている。消費者ニーズや企業の経営戦略の変化に伴い、物流には多品種少量化、多頻度小口化、そしてJIT化が要求されている。そのため、大きく分けて2つの問題が生じている。1つには、労働力不足からくる物流費の高騰である。もう一つが、トラック輸送の増大による環境問題である。 そこで本稿では、まず現在の環境問題を整理する。次に、物流ニーズの変化がトラック輸送を増大する傾向にあり、そのことが環境に対して大きな影響を及ぼしていることを明らかにする。 さらに、物流の立場から環境改善を進めるために、モーダルシフトの可能性を探る。そのため、まず現状の荷主がどのような基準で輸送機関を選択しているかを、判別モデルを用いて明らかにする。このモデルからモーダルシフト量を計算し、環境がいかに改善されるかを検討する。また、トラックと内航船のコストモデルを作成し、モーダルシフトによる経済効果を計算する。 最後に、モーダルシフト先の鉄道と内航船の抱えている問題を検討し、環境問題を改善するには、トラック輸送に対して課徴金を課すなどの内部化を図ることが必要であることを述べる。
ISSN:0919-3782
1884-6858
DOI:10.11285/logisticssociety1992.1992.63