方言の地域差から年齢差へ 庄内浜荻追跡調査の多重対応分析
本稿では山形県庄内地方で行われた方言調査データに多重対応分析を適用した結果を報告する。江戸時代の方言集『浜荻』掲載406語の残存率について1950年に3世代,2018年に4世代の調査が行われ,長期の言語変化が分かった。「年齢柱方言地図」と「単純化グロットグラム」を作図して考察した。140年にわたる世代差を踏まえ,20世紀の地域差の大きい時期から,21世紀の世代差の大きい時期に移行したことを論じる。多重対応分析によって方言の分布と変化の複雑なパターンを要約し,全体傾向を把握できた。第1軸には140年という長さの年齢差が表れ,第2軸以下には庄内方言南北80 kmの地域差が示された。南北差が大きいの...
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Published in | 言語研究 Vol. 162; pp. 63 - 89 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本言語学会
2022
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0024-3914 2185-6710 |
DOI | 10.11435/gengo.162.0_63 |
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Summary: | 本稿では山形県庄内地方で行われた方言調査データに多重対応分析を適用した結果を報告する。江戸時代の方言集『浜荻』掲載406語の残存率について1950年に3世代,2018年に4世代の調査が行われ,長期の言語変化が分かった。「年齢柱方言地図」と「単純化グロットグラム」を作図して考察した。140年にわたる世代差を踏まえ,20世紀の地域差の大きい時期から,21世紀の世代差の大きい時期に移行したことを論じる。多重対応分析によって方言の分布と変化の複雑なパターンを要約し,全体傾向を把握できた。第1軸には140年という長さの年齢差が表れ,第2軸以下には庄内方言南北80 kmの地域差が示された。南北差が大きいので,鶴岡からの徒歩距離を計測して「単純化グロットグラム」を作成し,代表的な8語のうち3語を例示した。地方的周圏分布が見られるとともに,現在の若い世代の急速な方言衰退が見られ,他方中学生による方言使用も観察された。 |
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ISSN: | 0024-3914 2185-6710 |
DOI: | 10.11435/gengo.162.0_63 |