医師の漢方処方に関する経験情報のデータベース化とその有用性 四肢の冷えに対するアンケート調査報告

本研究の目的は『四肢の冷え』に対する漢方治療のアンケート調査に基づき,医師の経験則を統計学的に分析することであり,得られたデータベースとその臨床有用性を検証することである。『四肢の冷え』に対し最も汎用する方剤は,当帰四逆加呉茱萸生姜湯であり,以下,桂枝加朮附湯,八味地黄丸,当帰芍薬散と続いた。医師がこれらの方剤を処方する際に重視する所見として,四診の中で特定なものはなく,各々の方剤に特有な所見や診断基準を用いて処方する点が特徴的であった。医師間で,方剤選択における症状や所見の信頼度に違いがあった。医師の経験値としての,『四肢の冷え』に対する汎用方剤の効果発現時期と寛解時期は正に相関した(R2=...

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Published in日本東洋医学雑誌 Vol. 65; no. 2; pp. 138 - 147
Main Authors 飯塚, 徳男, 内薗, 明裕, 北野, 敬明, 佐藤, 泰昌, 千福, 貞博, 中永, 士師明, 西田, 欣広, 福元, 銀竜, 南澤, 潔, 山口, 孝二郎, 劉, 震永
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本東洋医学会 2014
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Summary:本研究の目的は『四肢の冷え』に対する漢方治療のアンケート調査に基づき,医師の経験則を統計学的に分析することであり,得られたデータベースとその臨床有用性を検証することである。『四肢の冷え』に対し最も汎用する方剤は,当帰四逆加呉茱萸生姜湯であり,以下,桂枝加朮附湯,八味地黄丸,当帰芍薬散と続いた。医師がこれらの方剤を処方する際に重視する所見として,四診の中で特定なものはなく,各々の方剤に特有な所見や診断基準を用いて処方する点が特徴的であった。医師間で,方剤選択における症状や所見の信頼度に違いがあった。医師の経験値としての,『四肢の冷え』に対する汎用方剤の効果発現時期と寛解時期は正に相関した(R2=0.971,P =0.014)。効果発現時期(X)と寛解時期(Y)の重回帰式(Y=4.379X-0.519)は,実際の『四肢の冷え』治療後の寛解例(n=7)の臨床経過と合致しており,この重回帰式の治療経過のモニターとしての有用性が示唆された。
ISSN:0287-4857
1882-756X
DOI:10.3937/kampomed.65.138