パンデミックの政治的衝撃 権力移行と民主主義

パンデミック危機の過程で、政治学の分野では「パンデミック政治」と公衆衛生の政策論が注目された。新興大国のブラジル、ロシア、中国、インドはどう対応したか。米欧諸国と対立や緊張を抱えるロシアや中国は独自の政策を進め、国威をかけたワクチンの開発と生産を行い、「ワクチン外交」を繰り広げた。インドも自国製ワクチンを開発・生産し、アストラゼネカの生産拠点ともなり、ロ中と米欧日に分裂する世界における国益の増大をめざした。ユーラシアの三国の動向は、多くの途上国とともに、遠いラテンアメリカのブラジルにも深い影響を与えた。グローバリゼーション時代の「複合的危機」に襲われた国々で、国際主義や民主主義が動揺する。南ア...

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Published in学術の動向 Vol. 28; no. 2; pp. 2_75 - 2_78
Main Author 竹中, 千春
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本学術協力財団 01.02.2023
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ISSN1342-3363
1884-7080
DOI10.5363/tits.28.2_75

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Summary:パンデミック危機の過程で、政治学の分野では「パンデミック政治」と公衆衛生の政策論が注目された。新興大国のブラジル、ロシア、中国、インドはどう対応したか。米欧諸国と対立や緊張を抱えるロシアや中国は独自の政策を進め、国威をかけたワクチンの開発と生産を行い、「ワクチン外交」を繰り広げた。インドも自国製ワクチンを開発・生産し、アストラゼネカの生産拠点ともなり、ロ中と米欧日に分裂する世界における国益の増大をめざした。ユーラシアの三国の動向は、多くの途上国とともに、遠いラテンアメリカのブラジルにも深い影響を与えた。グローバリゼーション時代の「複合的危機」に襲われた国々で、国際主義や民主主義が動揺する。南アフリカも独自の問題を抱えているものの、他のBRICS諸国はイリベラル・デモクラシーや独裁に傾斜し、権力移行をめざす大国化の道を歩んでいる。危機の時代に、パンデミック後の「知」と新しい構想が求められている。
ISSN:1342-3363
1884-7080
DOI:10.5363/tits.28.2_75