ネガティブな情動を表出する4歳児への保育者の援助と思考判断 関与の程度が異なる3つの援助場面に着目して

本研究では,幼児がネガティブな情動を表出するときに,保育者がどのような思考判断を行っているのかを,幼児への関与の程度が異なる3つの援助場面に着目して検討した。4歳児クラスでの参与観察を行い,幼児がネガティブ情動を表出する場面で担当保育者一名が行う援助の様子を記録し,その記録映像を用いて当保育者に対するインタビューを行った。その結果,幼児への関与の程度に拘らず,保育者は幼児が表出するネガティブ情動を園生活を中長期的に捉えるなかで意味づけていることが明らかになった。対して,ある幼児が表出するネガティブな気持ちと周りの幼児の気持ちが異なり,なおかつ保育者が両者の気持ちを尊重したいと考えている場合に,...

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Published in保育学研究 Vol. 57; no. 1; pp. 29 - 42
Main Author 芦田, 祐佳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本保育学会 2019
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Summary:本研究では,幼児がネガティブな情動を表出するときに,保育者がどのような思考判断を行っているのかを,幼児への関与の程度が異なる3つの援助場面に着目して検討した。4歳児クラスでの参与観察を行い,幼児がネガティブ情動を表出する場面で担当保育者一名が行う援助の様子を記録し,その記録映像を用いて当保育者に対するインタビューを行った。その結果,幼児への関与の程度に拘らず,保育者は幼児が表出するネガティブ情動を園生活を中長期的に捉えるなかで意味づけていることが明らかになった。対して,ある幼児が表出するネガティブな気持ちと周りの幼児の気持ちが異なり,なおかつ保育者が両者の気持ちを尊重したいと考えている場合に,保育者はネガティブな情動を表出する幼児への直接的な関与を控えていることがわかった。また,保育者が幼児に情動を理解する力や表現する力を身につけさせたいと考えているとき,保育者は幼児に対して積極的に関与するのに対し,幼児の情動制御を援助する必要性を感じているときには,幼児に対して直接的な関与を控えるなど,保育者が幼児に身につけてほしいと考える力と幼児への関与の程度の関連性が示唆された。以上を踏まえ,幼児の情動面に対する保育者の援助の専門性について議論した。
ISSN:1340-9808
2424-1679
DOI:10.20617/reccej.57.1_29