仲間のネガティブな情動を帯びた言動に対する低学年児童の対応 児童の情動コンピテンスと学習活動の種類による差異に着目して

本研究では,仲間のネガティブな情動を帯びた言動(泣く,不満を口にする等)に対する低学年児童の対応を検討した。小学2年生1学級に参与し,学級の誰か(表出児)がネガティブな情動を帯びた言動を示した場面を観察した(13事例)。各事例における児童の対応が,情動コンピテンス(H群・L群)とその場で取り組んでいる学習活動の種類(教科学習・教科外活動)によってどのように異なるのか,また児童間でどのような相互作用が生じているのかを,児童の発話と視線を対象に検討した。 その結果,教科外活動の事例では,いずれの群の児童も表出児や他児に対して肯定的な発話を行いながら,表出児が抱える困難を自律的に解決しようとしている...

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Published in教育心理学研究 Vol. 69; no. 4; pp. 421 - 438
Main Author 芦田, 祐佳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本教育心理学会 30.12.2021
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Summary:本研究では,仲間のネガティブな情動を帯びた言動(泣く,不満を口にする等)に対する低学年児童の対応を検討した。小学2年生1学級に参与し,学級の誰か(表出児)がネガティブな情動を帯びた言動を示した場面を観察した(13事例)。各事例における児童の対応が,情動コンピテンス(H群・L群)とその場で取り組んでいる学習活動の種類(教科学習・教科外活動)によってどのように異なるのか,また児童間でどのような相互作用が生じているのかを,児童の発話と視線を対象に検討した。 その結果,教科外活動の事例では,いずれの群の児童も表出児や他児に対して肯定的な発話を行いながら,表出児が抱える困難を自律的に解決しようとしていることが明らかになった。一方,教科学習の事例では,情動コンピテンスH群の児童が学習を意識した対応を行っていることや,表出児や他児に対する肯定的発話が,表出児の真意や学習活動の文脈に沿っていないという理由で,児童たちから否定されやすいことが示された。以上の結果から,表出児が情動を示したときに学級で取り組んでいる学習活動の種類によって,表出児に対する児童の対応が異なる可能性が示唆された。
ISSN:0021-5015
2186-3075
DOI:10.5926/jjep.69.421