特別養護老人ホーム入居者の自律的生活を支える施設環境の条件 入居者の戸外空間利用に着目して
高齢や障害によって要介護状態となり施設に入居することになっても, 可能な限りの自律的生活を支えるためには, いつ・どこで・誰と・何をして過ごすかといった生活行動の選択性が確保され, それが実現できる空間構成でなければならない. 本研究は, 特別養護老人ホームの建物・敷地内における入居者の生活空間において, 入居者の自律的生活を支援する上での課題を明らかにする. 研究方法は, まず全国の特養を対象とするアンケート調査により特養入居者の生活空間の概要を把握し, その後, 16事例に対する実地調査の結果について, 戸外空間の利用状況, および居室から戸外までの移動経路上の施錠有無の両側面から考察し空...
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Published in | 日本家政学会誌 Vol. 73; no. 3; pp. 149 - 163 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本家政学会
2022
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Subjects | |
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Summary: | 高齢や障害によって要介護状態となり施設に入居することになっても, 可能な限りの自律的生活を支えるためには, いつ・どこで・誰と・何をして過ごすかといった生活行動の選択性が確保され, それが実現できる空間構成でなければならない. 本研究は, 特別養護老人ホームの建物・敷地内における入居者の生活空間において, 入居者の自律的生活を支援する上での課題を明らかにする. 研究方法は, まず全国の特養を対象とするアンケート調査により特養入居者の生活空間の概要を把握し, その後, 16事例に対する実地調査の結果について, 戸外空間の利用状況, および居室から戸外までの移動経路上の施錠有無の両側面から考察し空間利用の実態を把握した. 結果を分析し, 以下の3点にまとめた.①居室の扉と鍵の開閉状態を入居者が選択でき, 緊急事態にも即座に対応できる環境を整備する.②戸外空間は入居者の自由な出入りを前提として計画すること 庭・中庭等は, 戸外空間と居住階は同一階に配置する, 隣接する他施設等の敷地利用の可能性を含めた計画とすること. バルコニーは, 入居者が過ごすことを前提とした幅, 手すりの形態, 出入り口段差の解消などにより利用の機会が増加する.③入居者を見守りしやすい空間構成とすること 入居者が建物内外を自由に行き来しても, 職員が見守りやすい室空間配置とし, 玄関から敷地外まで一定の移動距離をもたせること. |
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ISSN: | 0913-5227 1882-0352 |
DOI: | 10.11428/jhej.73.149 |