高度成長期のテレビドキュメンタリーにおける「青少年問題」の表象 NHK『日本の素顔』『現代の記録』『現代の映像』を対象に

本研究の目的は,高度成長期にNHKで制作・放送されたテレビドキュメンタリーを分析対象として,そこにおいて「青少年問題」がいかなる問題として表象されたのかを解明することである。  分析に先立ち,高度成長期の青少年問題に関する先行研究のレビューおよび分析対象とする番組の社会的位置づけについて整理を行い,テレビドキュメンタリーを分析対象として上記課題を解明することの意義・必要性について議論した。  分析によって得られた主な知見は,以下の通りである。  ①青少年の逸脱を都市化と結びつけて描き出すパターンが,定番化していた。都市化は近代化による社会変動の象徴であり,個々人の意志や力を超えた巨大なうねりの...

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Published in教育社会学研究 Vol. 101; pp. 69 - 89
Main Author 石岡, 学
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本教育社会学会 30.11.2017
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Summary:本研究の目的は,高度成長期にNHKで制作・放送されたテレビドキュメンタリーを分析対象として,そこにおいて「青少年問題」がいかなる問題として表象されたのかを解明することである。  分析に先立ち,高度成長期の青少年問題に関する先行研究のレビューおよび分析対象とする番組の社会的位置づけについて整理を行い,テレビドキュメンタリーを分析対象として上記課題を解明することの意義・必要性について議論した。  分析によって得られた主な知見は,以下の通りである。  ①青少年の逸脱を都市化と結びつけて描き出すパターンが,定番化していた。都市化は近代化による社会変動の象徴であり,個々人の意志や力を超えた巨大なうねりのようなものとして捉えられていた。  ②学校教育は「青少年問題」に対し無力な存在として早い段階から描き出されていた。特に,受験体制に飲み込まれた学校が青少年の不良化の一因であるとする認識がみられたが,受験体制自体は社会に起因する問題として捉えられていた。  ③青少年問題は,大人社会の歪みの反映として位置づけられていた。そのことは,因果関係を持ち込むことで問題の解決可能性を担保する機能を有していたが,そこには青少年の主体性を剥奪する逆機能も存在していた。それゆえ,結果的に「世代間断絶」は構築・維持され,「問題」は解決不可能なものとして再生産されるという原理的アポリアを内包していた。
ISSN:0387-3145
2185-0186
DOI:10.11151/eds.101.69