シュタイナー学校における造形教育の人間形成的意義 粘土を用いた授業に着目して

本研究は,シュタイナー学校の教育実践における粘土を用いた造形活動に着目し,その人間形成的意義を明らかにした。創始者R.シュタイナーの人間観や子供の発達観を基盤として,文献に紹介されている題材例と,筆者が授業観察と教育実習を行ったニュルンベルク・シュタイナー学校の造形教育の実際から考察を行った。その結果,この学校の粘土を用いた題材は,手で直接造形する粘土の特徴から主に「身体」に,1~8年生では学習内容と関連付けた想像的な活動によって「心性」に,9年生以上では目に見えない力や抽象的な題材を扱うことによって「精神」に働きかけ,12年間の一貫教育の中で人間全体が系統性をもって育成されてい...

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Published in美術教育学:美術科教育学会誌 Vol. 39; pp. 409 - 421
Main Author 吉田, 奈穂子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 美術科教育学会 2018
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Summary:本研究は,シュタイナー学校の教育実践における粘土を用いた造形活動に着目し,その人間形成的意義を明らかにした。創始者R.シュタイナーの人間観や子供の発達観を基盤として,文献に紹介されている題材例と,筆者が授業観察と教育実習を行ったニュルンベルク・シュタイナー学校の造形教育の実際から考察を行った。その結果,この学校の粘土を用いた題材は,手で直接造形する粘土の特徴から主に「身体」に,1~8年生では学習内容と関連付けた想像的な活動によって「心性」に,9年生以上では目に見えない力や抽象的な題材を扱うことによって「精神」に働きかけ,12年間の一貫教育の中で人間全体が系統性をもって育成されていることが明らかになった。以上のことから,我が国の学校教育において,造形活動を利用した教科教育のあり方と調和的な人間形成を目指す教育の可能性が示唆された。
ISSN:0917-771X
2424-2497
DOI:10.24455/aaej.39.0_409