経営理念の多様性に関する探索的研究 三方よし理念の由来の視点から

企業経営に持続可能性が求められる昨今、企業のあり方の拠り所である経営理念の重要性が高まっている。近年では、持続可能性に関連する新しい概念、例えば持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)やステークホルダー資本主義、企業の存在意義としてのパーパスなどが導入され、それらの文脈において三方よしという言葉を目にする機会が増えている。一般的に近江商人の経営理念として見聞きすることが多い「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしは、現在では「近江商人の到達した普遍的な経営理念をごく簡略に示すためのシンボル的標語」と位置付けられている(末永, 2004)...

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Published inイノベーション・マネジメント Vol. 22; pp. 369 - 383
Main Author 三木田, 尚美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター 31.03.2025
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ISSN1349-2233
2433-6971
DOI10.24677/riim.22.0_369

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Summary:企業経営に持続可能性が求められる昨今、企業のあり方の拠り所である経営理念の重要性が高まっている。近年では、持続可能性に関連する新しい概念、例えば持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)やステークホルダー資本主義、企業の存在意義としてのパーパスなどが導入され、それらの文脈において三方よしという言葉を目にする機会が増えている。一般的に近江商人の経営理念として見聞きすることが多い「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしは、現在では「近江商人の到達した普遍的な経営理念をごく簡略に示すためのシンボル的標語」と位置付けられている(末永, 2004)。一方で、「自分よし、相手よし、第三者よし」の三方よしはモラロジー(道徳科学)を由来とするものとして知られ、日本で最初の三方よしの表現者は廣池千九郎であり、1930年代には企業で使用されていた可能性が高いとされている(大野, 2011, 2012;末永, 2014, 2023)。三方よしという同じ言葉で表現される経営理念をもつ企業は数々存在する中、その言葉の由来による経営理念の特徴については着目されてこなかった。本論文では、三方よし理念を持つ企業の中から近江商人を由来とする企業とモラロジーを由来とする企業を対象として探索的研究を行い、新たな仮説を導出した。
ISSN:1349-2233
2433-6971
DOI:10.24677/riim.22.0_369