「グローバル人材」とは誰か シンボリック・バウンダリーの視点から
本研究の目的は,シンボリック・バウンダリーの視点から,「グローバル人材」が自身や集団をどのように定義・認識し,集団としてのメンバーシップをいかなる基準で設定しているのかを明らかにすることである。 先行研究では「グローバル人材」の定義や要件をめぐって,留学経験や語学力といった「客観的」な側面から多くの批判が寄せられてきた。しかし,「グローバル人材」の当事者が「グローバル人材とは誰か」という問いをいかに捉えているのかという「主観的」な側面については明らかにされてこなかった。 そこで,本研究では44名の「グローバル人材」へのインタビュー調査によって,以下の四点を明らかにした。第一に,「グローバル...
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Published in | 教育社会学研究 Vol. 113; pp. 5 - 26 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本教育社会学会
20.12.2023
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Subjects | |
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ISSN | 0387-3145 2185-0186 |
DOI | 10.11151/eds.113.5 |
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Summary: | 本研究の目的は,シンボリック・バウンダリーの視点から,「グローバル人材」が自身や集団をどのように定義・認識し,集団としてのメンバーシップをいかなる基準で設定しているのかを明らかにすることである。 先行研究では「グローバル人材」の定義や要件をめぐって,留学経験や語学力といった「客観的」な側面から多くの批判が寄せられてきた。しかし,「グローバル人材」の当事者が「グローバル人材とは誰か」という問いをいかに捉えているのかという「主観的」な側面については明らかにされてこなかった。 そこで,本研究では44名の「グローバル人材」へのインタビュー調査によって,以下の四点を明らかにした。第一に,「グローバル人材」は「普通の大学生」や「エリート」との間に「やりたいこと」というバウンダリーを形成している。第二に,「グローバル人材」内部では「やりたいこと」というバウンダリーによって序列が形成されている。第三に,「やりたいこと」は「正統から外れる」ものであることが望ましく,「交換留学」や「標準的なルート」は評価されない。また,それは「社会貢献」との接続が理想視されている。第四に,こうした条件を満たせるかどうかには,家庭環境やジェンダーが関わっている。 以上から,「グローバル人材」はこうしたシンボリック・バウンダリーを形成することで,集団の外部との間に,また,集団の内部においても差異を生み出していることを指摘した。 |
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ISSN: | 0387-3145 2185-0186 |
DOI: | 10.11151/eds.113.5 |