一純粋失読例における漢字・仮名の乖離の検討 漢字・仮名一文字の音読となぞり読みの比較から

純粋失読の読字障害は,漢字と仮名の両方にみられるとされているが,一方が強く障害されて乖離するという報告もあり,いまだ一定の結論が出ているとは言いがたい。また,漢字と仮名のなぞり読みにおける乖離について,漢字の条件を統制し,仮名と比較した検討はこれまで行われていない。我々は,左後頭葉から脳梁にかけての損傷で,純粋失読を呈した一症例を経験した。本症例は,標準的な失語症検査において,仮名の読みが漢字の読みに比して良好であった。しかし,漢字の条件を統制して比較を行ったところ,音読,なぞり読みともに,形態が単純で,高親密度,高頻度の漢字と仮名との間では有意差を認めなかったが,形態が単純で,高親密度,高頻...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 30; no. 1; pp. 96 - 101
Main Authors 田川, 皓一, 福永, 真哉, 服部, 文忠, 生方, 志浦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能学会 31.03.2010
Subjects
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.30.96

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Summary:純粋失読の読字障害は,漢字と仮名の両方にみられるとされているが,一方が強く障害されて乖離するという報告もあり,いまだ一定の結論が出ているとは言いがたい。また,漢字と仮名のなぞり読みにおける乖離について,漢字の条件を統制し,仮名と比較した検討はこれまで行われていない。我々は,左後頭葉から脳梁にかけての損傷で,純粋失読を呈した一症例を経験した。本症例は,標準的な失語症検査において,仮名の読みが漢字の読みに比して良好であった。しかし,漢字の条件を統制して比較を行ったところ,音読,なぞり読みともに,形態が単純で,高親密度,高頻度の漢字と仮名との間では有意差を認めなかったが,形態が単純で,高親密度,高頻度の漢字と,形態が複雑で,低親密度,低頻度の漢字の間では有意差が認められた。また,形態が複雑で,低親密度,低頻度の漢字においては,なぞり読みが有効な傾向にあった。本症例において,漢字の読字過程は複雑さ,親密度,頻度によって,異なっている可能性が考えられた。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.30.96