持続可能な広葉樹林経営の経済性評価 紀州備長炭の原木生産に向けたウバメガシ択伐林経営の事例分析
本稿の目的は,利用期を迎える国内針葉樹人工林を樹種転換し,持続可能な広葉樹林経営に転換する際に必要な経済価値の比較分析を行い,その条件を検討することである。本稿では,和歌山県における紀州備長炭の原木生産を目的としたウバメガシ択伐林の広葉樹林経営を対象とした。県内の森林所有者がウバメガシ択伐林に樹種転換を行い紀州備長炭生産および販売する場合の無限期間に渡る正味現在価値(NPV)を算出し,スギ・ヒノキ人工林と比較した。生産者価格と丸太価格,択伐回帰年と輪伐期を変化させることによる感度分析を行った。結果,ウバメガシ択伐林への樹種転換は,現在の平均的な生産者価格が維持されればNPVが正となり,投資価値...
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Published in | 林業経済研究 Vol. 64; no. 1; pp. 36 - 47 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
林業経済学会
2018
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Subjects | |
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ISSN | 0285-1598 2424-2454 |
DOI | 10.20818/jfe.64.1_36 |
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Summary: | 本稿の目的は,利用期を迎える国内針葉樹人工林を樹種転換し,持続可能な広葉樹林経営に転換する際に必要な経済価値の比較分析を行い,その条件を検討することである。本稿では,和歌山県における紀州備長炭の原木生産を目的としたウバメガシ択伐林の広葉樹林経営を対象とした。県内の森林所有者がウバメガシ択伐林に樹種転換を行い紀州備長炭生産および販売する場合の無限期間に渡る正味現在価値(NPV)を算出し,スギ・ヒノキ人工林と比較した。生産者価格と丸太価格,択伐回帰年と輪伐期を変化させることによる感度分析を行った。結果,ウバメガシ択伐林への樹種転換は,現在の平均的な生産者価格が維持されればNPVが正となり,投資価値があるものと判定された。スギ・ヒノキ人工林と比較すると,補助金の有無に関わらず,ウバメガシ択伐林のNPVが大きくなった。そして,紀州備長炭のブランド力と生産者価格を維持する供給量と対象森林面積の確保,市場の成長性を見据えた樹種転換面積となること,期間を要する製炭士育成および事業転換期間の安定した収入が確保されていることが樹種転換の条件として必要になることを明らかにした。 |
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ISSN: | 0285-1598 2424-2454 |
DOI: | 10.20818/jfe.64.1_36 |