自己イメージの形成とアイデンティティ権 メタバースのアバターを中心に

本稿では、メタバース内で活動するアバターの背後に存在する操作者(本人)に対し、アバターの利用を通じた人格的同一性の保持に関して付与し得る人格権ないしは人格的利益を検討した。メタバースでの秩序形成においては、なりすましによる被害から本人を法的に保護する仕組みを設けることが必要であり、係る保護を理論的に裏付ける説として、憲法学の領域における「自己イメージコントロール権」、「自己像の同一性に対する権利」、そして、実務的な観点から提唱されている「他者との関係において人格的同一性を保持する利益」としての「アイデンティティ権」が挙げられる。これらの権利概念は必ずしも確立しているわけではないが、少なくともソ...

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Published in情報通信政策研究 Vol. 7; no. 1; pp. 125 - 138
Main Author 石井, 夏生利
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 総務省情報通信政策研究所 21.04.2023
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ISSN2433-6254
2432-9177
DOI10.24798/jicp.7.1_125

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Summary:本稿では、メタバース内で活動するアバターの背後に存在する操作者(本人)に対し、アバターの利用を通じた人格的同一性の保持に関して付与し得る人格権ないしは人格的利益を検討した。メタバースでの秩序形成においては、なりすましによる被害から本人を法的に保護する仕組みを設けることが必要であり、係る保護を理論的に裏付ける説として、憲法学の領域における「自己イメージコントロール権」、「自己像の同一性に対する権利」、そして、実務的な観点から提唱されている「他者との関係において人格的同一性を保持する利益」としての「アイデンティティ権」が挙げられる。これらの権利概念は必ずしも確立しているわけではないが、少なくともソフトローによる秩序形成の背景に存在する根拠となり得る。今後、メタバースがさらに拡大し、ハードローによる法的保護を必要とする社会的合意が形成される段階に至った場合には、上記の各権利概念が実定法上の権利へと発展する可能性はあると考える。
ISSN:2433-6254
2432-9177
DOI:10.24798/jicp.7.1_125