いかに男性は社会的孤立に至るのか 学校内における男性集団からの排除と分離に着目して
近年男性の社会的孤立が社会問題となっている.この現状に対して,これまでの研究は性役割論に則り,男性が男性役割に拘束されているがゆえに孤立しやすいという直線的な説明しか与えてこなかった.そこで本稿では,レイウィン・コンネルの男性性理論を応用し,他者との相互作用や男性個人の主体的選択などを含め,社会的孤立,つまり集団からの排除もしくは分離の過程を詳細に分析することを目的とした.学校内で孤立を経験した男性4名にライフヒストリーインタビューを実施したところ,2 つの社会的孤立のプロセスが明らかになった.1つ目は障害を抱えるなどして男性の会話文化に参入できなかった場合,無視や軽視といった形で追い詰められ...
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Published in | 社会学評論 Vol. 75; no. 1; pp. 56 - 74 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本社会学会
2024
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0021-5414 1884-2755 |
DOI | 10.4057/jsr.75.56 |
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Summary: | 近年男性の社会的孤立が社会問題となっている.この現状に対して,これまでの研究は性役割論に則り,男性が男性役割に拘束されているがゆえに孤立しやすいという直線的な説明しか与えてこなかった.そこで本稿では,レイウィン・コンネルの男性性理論を応用し,他者との相互作用や男性個人の主体的選択などを含め,社会的孤立,つまり集団からの排除もしくは分離の過程を詳細に分析することを目的とした.学校内で孤立を経験した男性4名にライフヒストリーインタビューを実施したところ,2 つの社会的孤立のプロセスが明らかになった.1つ目は障害を抱えるなどして男性の会話文化に参入できなかった場合,無視や軽視といった形で追い詰められ,排除されていくプロセスである.2つ目は,今いる集団より優位な男性集団への参入をめざすも,それが叶わなかった男性たちが,その葛藤に対処するために優位にいる男性と自己を差異化することで心理的優越を図り,結果的に他の男性との関係から遠ざかっていく〈自己孤立化〉のプロセスである.以上の結果は,これまで明らかになっていなかった男性の社会的孤立のメカニズムを描き出した.また,排除や分離といった相互作用を通して男性間に階層性が作り出され,維持されていく動態も明らかになった. |
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ISSN: | 0021-5414 1884-2755 |
DOI: | 10.4057/jsr.75.56 |